手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

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紀州の棕櫚箒

紀州の棕櫚箒

2006年12月 大部優美
製作地:和歌山県紀美野町近辺

 

「これが、手仕事なのか!」。棕櫚(しゅろ)の箒(ほうき)との出合いは衝撃でした。自然の素材のあたたかさ、長く使い続けることができる堅牢さ、実用性から生まれた形の美しさ、一つひとつに込められたつくり手の思い……。それまで漠然と頭で理解していたつもりだった手仕事の品の「よさ」が、この箒を見た瞬間、ストンと体に入ってきたのです。棕櫚の繊維の束が銅線できつく結わえられ、少しのずれもなく並んでいる様子は、力強さを感じさせるだけでなく、芸術的ですらあります。その銅線も、縞模様のようで見た目に楽しいのですが、決して最初から意図されたものではなく、より丈夫にするための仕事が生んだものです。

 でも、棕櫚箒のすばらしさはむしろ、その機能にあります。掃除機では微妙に届きにくい隙間にも届き、細かい埃も集めます。騒音も出ないので、夜中に急に掃除したくなっても、ご近所に気兼ねすることもありません。部屋の片隅に吊しておけば、掃除機を出し入れする手間もいらず、ずぼらな私にもぴったり。電気代もかからず、環境に負担をかけない「ロハスなお掃除方法」が無理なくできるのです。手仕事の品をつかったり、それらのよさを再認識したりすることは、暮らし方や生き方そのものを見直すことなのだな、と気づきます。

 柄の長さが1メートルほどの座敷箒、その半分ほどの手箒のほか、机の上など狭いところを掃除する柄のない小箒、グラスを洗うブラシなど、様々なバリエーションがあります。特に、写真のブラシは、細いグラスを洗うのにおすすめです。洗剤を使わなくても、余計な力を入れなくても、底の汚れを簡単に落としてくれます。また、束子(たわし)も様々な形や大きさのものがつくられています。写真のミニ束子は、小さめのお鍋やフライパンを洗うのにちょうどよく、シンクの端に置いておいても邪魔になりません。形も、なんだかキュートだと思いませんか?

 

 これらの棕櫚の品物は、和歌山県の紀美野町近辺でいまでもつくられています。しかし、他の多くの手仕事同様、職人さんの高齢化、後継者問題、地元の上質な材料(や採り手)がなくなってしまったこと、中国製品との価格競争などの問題を抱え、状況は厳しいようです。棕櫚の品物を生活にとり入れ、周りの人におすすめし、フォーラムを通じて紹介することで、需要の面で少しでも応援できたら、と思っています。