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機能の逸品 米研ぎ笊

機能の逸品 米研ぎ笊

2007年4月 北島隆幸
製作地:山梨県河口湖、宮城県岩出山

 今の生活の中で、籠(かご)や笊(ざる)などの組編品を本来の用途で使用するのはかなり難しく、都会生活においてはなおさらの事であります。しかし、地球上で「物を楽しんで使う」特権を与えられたのが人間でありまして、人が築き上げてきた伝統の形をそのまま保ちながら、しかし他の用途を模索することもまた大きな楽しみではないでしょうか。

 そんな中で、今回紹介する米研ぎ笊は本来の用途を失わずに使える数少ない組編品の一つであります。

 我が家には二つの米研ぎ笊があります。一つは山梨県の河口湖の物、もう一つは宮城県岩出山の物です。

 写真の河口湖の方は数年使って破損してしまいもうお役目を終え、毛糸玉の入れ物になっているのですが、一方の岩出山の米研ぎ笊は現役バリバリであります。

我が家の炊飯器はちょっと前までガス釜でしたが、時代の趨勢により電気に移行してしまいました。米は電気より火を使って炊いたほうがおいしく、電気よりガス、ガスより薪、炭という具合に技術はいるものの、高機能の電気炊飯器より数倍おいしく炊けると私は感じております。

 米の研ぎ方は、電気炊飯器で炊いたらそんなに影響は出ないと考えておりました。しかしこれが違うのです。そう思い知らされたのが、この米研ぎ笊を使ってからのことなのであります。数年前に我が家にはちょっとした理由で古米が20kgほどあり、丹念に研いで高機能電気炊飯器で炊くと古米も味はそこそこでした。

 ある日、もやい工藝で河口湖の米研ぎ笊を見つけ、これで研いで炊いたら少しは味が違うかなと漠然とした思いがして、ほんとうのところは定期券や財布・名刺入れを入れておくのに良いと考えて購入したのでしたが、買ったその日に試しに古米を研いで炊いてみたら、なんと新米のようなおいしさに炊き上がったのです。いや、もしかしたら、弾力などは古米特有の良さ?も味わえる炊き上がりになったのではないでしょうか。それ以来、米は古米、新米に限らず米研ぎ笊を使って研いで炊くことが日常になりました。なぜおいしく炊けるのか、理由はわかりません。竹特有の材質が米を適度に研磨し、おいしくするのかも知れません。とにかく、我々が忘れていた生活の知恵が甦った、という感じです。

 古米を笊で研ぎ始めたのは河口湖の米研ぎ笊が初代で、岩出山の米研ぎ笊は2代目になります。河口湖の米研ぎ笊が壊れてしまってから、ほんの少し米研ぎ笊が無い日々をすごし、代替わりをして岩出山の米研ぎ笊が家に来たころは古米もなくなっておりましたが、岩出山の米研ぎ笊も河口湖の笊にそん色なく威力を発揮します。それは、新米を研いで炊いても、新米がさらにおいしく炊ける!という事実が物語っているのです。

 今は生活が忙しく米を研ぐ時間も惜しい、面倒くさいという理由かどうかはわかりませんが、無洗米などというものが出ていて、わざわざ笊を使って米を研ぐという行為が逆行しているのではと感じないでもありません。しかし、米研ぎをおいしいご飯を焚くための行為であるという考えを思い出すことで、この笊は使って見たくなる一品ではないかと思います。

 笊の出来具合にもよりますが、しっかりとした手仕事で製品化されたこの米研ぎ笊は、私にとって用の文化を思い出させてくれた機能の逸品であり、これからも欠かすことがない一品でもあります。とても良い形で準国産の良品ですし、他の用途に工夫して使うのも楽しいはずです。組編品の素材はか弱い植物に見えますが、人の知恵と結び付くことで生きて行くための力強さを人に与えてくれるほんとに強い存在なのではないでしょうか?

 因みに、毎日米を研いでいるのはかみさんでございます。私は休みの日にたまに研ぐのでございます。こんな私が言うのも何ですが、ぜひ一度この米研ぎ笊を使って見てください。というよりも、『笊、籠の良品を使う生活』というものを米研ぎ笊に限らず感じていただければ喜ばしい限りです。