手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

ホーム>フォーラムが選ぶ・この逸品>湧川織物工房の芭蕉布

フォーラムが選ぶ・この逸品

湧川織物工房の芭蕉布

湧川織物工房の芭蕉布

2007年8月 大部優美
製作地:沖縄県今帰仁村/p>

 小さなひまわりを生けた花瓶に敷いたら、そこだけさわやかな風が吹き抜けるような清涼感。沖縄で生まれた芭蕉布には、やっぱり夏が似合うな、と思います。

 手仕事の現場を訪ねるなかで、美しい手仕事は、その土地の風土から生まれることを知りました。気候や地理が形づくる暮らしやなりわい、材料となる土や植物——。地域ごとに少しずつ違う使いみちや材料が、それぞれに合理的な作り方、形や大きさの違いを編み出しました。私たちが手仕事の品物に魅了されるのは、単にその形だけでなく、一つひとつのモノが持つ地域性や物語性にもあります。

 

 芭蕉布は、まさに沖縄の風土が織り込まれた布。

 

 湧川米子さんは、工房前の畑で自ら糸芭蕉を育て、福木(フクギ)などの植物から染料をとっています。色合いも織り込まれる模様もごくシンプルで、芸術作品としての芭蕉布とは一線を画しています。素材そのものの持つ魅力を最大限に引き立たせ、伝統的につくられてきたものを地道に織り続けたいという湧川さんの意志が感じられます。

 今年2月に工房を訪ねて一番印象的だったのが、糸を撚る工程を地域のお年寄りが担っているということでした。やがて布になっていくのを楽しみに、一度は絶えそうになった仕事が後の世代に継がれていくのを喜びにして、丹念に撚っているのでしょう。かつてはどの産地にもいろいろな分業の形があったのだと思いますが、こんな力の借り方が残っているのが何とも沖縄らしい感じがして、ますます親しみを持つようになりました。

 着物や帯にはなかなか手が届きませんが、コースターなど小物なら日々の暮らしにも採り入れられます。それでも、以前は地域限定だったものを身近に使えるのですから、贅沢なことです。うんざりするような厳しい暑さが続くこの季節、芭蕉布の小物でちょっと涼やかに過ごしてみてはいかがでしょうか。