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野田さんの書類入れカゴ

野田さんの書類入れカゴ

2010年1月 副島秀雄
製作地:長崎県佐世保市

 長崎県佐世保市郊外で竹細工を生業とし作り続けている野田利治さん。九州は豊富に竹が採れることもあり、それらを使った工芸品が様々に作られています。しかし、現在ではプラスチック製品の普及による需要不足などにより、野田さんのように青物細工と呼ばれる実用品を作る職人は少なくなっています。こちらの地域でも以前は数名の竹細工職人がいたそうですが、生業として竹細工をしているのは野田さんただ一人となっています。

 野田さんの作る竹細工は様々なものがあり、地域に根ざしたものから装飾品のようなものまで幅広く制作をしています。その他にも注文に応じて様々なものを作ることができます。その注文で作った物のなかに段物魚籠(だんものさかなかご)というものがあります。福岡県八女地方で作られていた籠で、野田さんが数年前にある釣り人が持参した見本を元に作った蓋付きの大きな籠です。ふたを開けると二段の籠の入れ子になっていて、釣った魚はもちろん、魚釣りに行く際の道具も入れることができるようになっています。釣り以外でも、部屋の収納など様々な用途に使うことができる大変便利な籠です。

 この段物魚籠を改良して制作されたものが書類入れ籠です。深さを浅くし、内側の籠を一つに変えてあります。そのためにサイズは小さくなりましたが、変わらない存在感と作りの良さが際立ちます。籠は角形に作ることが難しく、更にそれに合う蓋を作ることは大変な作業です。それを難なくこなしてしまう野田さんの技術があってこそ、この書類入れカゴは生まれます。緻密に編まれた胴体と底に差し込まれた力竹がその造形力を更に引き立てて、美しく力強さを感じさせてくれます。書類入れはプラスチックなどの味気ない物が多く使われていますが、この籠のような本物の手仕事は使い込むほどに親しみが湧き、生活に豊かさをもたらしてくれます。