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フォーラムが選ぶ・この逸品

鉄釉白輪抜縁付7寸5分皿

鉄釉白輪抜縁付7寸5分皿

2011年6月 瀧山直子
製作地:島根県温泉津

島根県、温泉津の森山窯、森山雅夫さんのお皿です。

 さる6月10日から倉敷クラフト幹での「日本の手仕事展」会場で手伝う中、数多くの出品物の中で私が眼を惹いた森山さんの皿について紹介致します。

森山さんは、昭和32年に河井寛次郎さんの内弟子になられ、その後も、倉敷堤窯武内晴二郎さんのもとでも修行をされた、卓越した技術をお持ちの陶工さんです。

 このお皿は、30年ほど前、(フォーラム代表)久野さんが、古道具屋さんでイギリス製のピュ−ター(合金)皿を目にし、とても欲しくなったそうですが高くて買えず、この皿を見本として石見の陶土で置き換えて出来ないか…と、森山さんに提案したことから生まれました。

 島根の石見地方の陶土は、高温度でなければ焼き締まらず、焼き上がると、磁器のように硬くなります。そのため、かつてはその陶質が容器用(塩、味噌など)として西日本各地で使われ、一世を風靡したとのことです。しかしプラスチック製品が出現すると、重たく、価格の高いそれらは、敬遠されがちとなりやがてすたれていったそうです。
 久野さんは、その強度が高く硬い陶質の土を活かすことで、割れにくい使いやすいお皿を作ってもらおうと考えました。
 平皿は、高台を広くしようとすると、底が変形しやすくなります。
 河井寛次郎のお弟子さんで、優れた技術をもって仕事をされる森山さんなら…、ということで高台底の輪を広げて作ることを森山さんにお願いしたそうです。
 はじめは、コバルト顔料のルリ釉のもの、灰釉だけをかけたシンプルなものからで、これは評判になりました。
 これまでの森山さんの河井系を継ぐかの様な仕事から、現代的な仕事の転換で、仕事の範囲が広がりました。さらにこのつくりを基にして変化をつけることで、より販売を促進する為に久野さんと相談して、白輪抜きという技法を考えつきました。
 鉄釉だけでは暗い感じになりがちですが、白化粧で輪を描くことにより、モダンで人目をひくものになり、より一層西洋的な洋皿の展開が進んでいくことになったのです。
 森山さんの技は卓越していたので、当初おもい描いていた久野さんの想像以上のものが仕上がったそうです。
 森山さんの秀でた技術、河井寛次郎のもとで学ばれたことによって開花した才覚、それに現代的なデザインがあいまって、この逸品が生まれたのです。
 特質すべきは、森山さんはさらにこの皿をやや深めにし、縁に線描きを入れることで、持ちやすくなり、デザイン的にも美しくなりました。

 石見地方の陶土には、赤土と白土があります。
 赤土に化粧土をかけると映え、鉄釉をかけると赤みを帯びて反映されます。
 この皿は、赤土を用いることにより、この作用が活き、洋皿としてとても美しくモダンなものになりました。

ステーキに野菜を添えて、またパスタやピラフにも、ぴったりです。また、和の料理、青じそをしき刺身をのせたり、深みがあるので、煮物などでも合いそうです。

 一枚のお皿には、こんなに深くて面白いエピソードがありました。それを知らなくても、いろいろな料理を引き立ててくれるこのお皿には、食卓を豊かにしてくれる包容力があります。
 でもそれを知ることは、私にとってわくわくし、よりものに対して敬意が湧いたようにも感じました。