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私が選んだ南房総・千倉の花籠 つくり手へのインタビュー

私が選んだ南房総・千倉の花籠 つくり手へのインタビュー

2013年12月 高梨武晃
製作地:千葉県南房総市

 三方を海に囲まれた房総半島。そこには温暖な気候を運ぶ黒潮が流れる。その南端、南房総市千倉の佐藤博さんを尋ねた。
 佐藤さんは専業で籠を編む。しかも花籠と呼ばれる背負籠を50年以上作ってきた。職人として時代の移り変わりを体験してきた人だ。

 

ーこの花籠は主にどのような用途に使われるのですか?
——ここらでは菜花を摘んだり花を入れるのに使うね。

 

佐藤さんが始められた50年近く前は職人もたくさん居られたんですか?
——何人もいたよ。それこそ30人くらいはいたな。大体この地区の家は全部竹細工をやってたんだよ。またその時分には籠が売れたんだ。プラスチックもまだ無い。周りにも籠を売る店もいっぱいあったし。このへんだと軍鶏の籠を作ってる人もいた。あと注文で種籠と言って貝を入れて海の中に沈めて生かしておくのに使う籠。籠屋って言っても家々で作ってる物が違ったんだよ。

 

同じ房総には長狭籠というかごがあるのですがご存知でしょうか?
——あー四角いのだよね。鴨川の長狭の方で使ってたんだよ。俺はやって無いし、この辺に作ってるのはいなかったな。


この花籠専門になったのはいつ頃からですか?
 初めの内は背負い籠よりも買い物に行くような手提げ籠。近所の人が買っていった。花籠は30年か40年か経つかな。この町でも船が盛んだった頃は色んな籠も出たけど。それでも俺は花籠だけやった。

 

籠の作り方は誰から教わったんですか?
 教わんねぇなぁ。自然と自然と。地区のみんながやってたから。だから自然と慣れた。師匠なんていねぇ。近所のみんなが師匠だ。

 

長年やってると材料の価格も変わってくるものなのでしょうか?
——値段は変わってない。だから籠も上げられない。材料が上がれば籠も上げられるけど、竹屋も10何年と上がってない。

 

この花籠は縁が内側に返してあるのが特徴の一つだと思うのですが、
 そうだよ、昔からこれ。外に返してあるのは巻き方が違うんだよ。前後でひごの数も変えてるから少しだけ口に角度がつくんだよ。これも昔からで、昔の人は何寸上げてとか、何尺で巻くとかよく考えてある。そうすると使いやすい形になるんだよ。

 

 南房総の気候にも似た、穏やかな口調で佐藤さんは語ってくれた。気負うこと無く伝統への敬意を口にする姿からは仕事への強い自信が見て取れた。