手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

ホーム>フォーラムが選ぶ・この逸品>松田共司さんの傑作

フォーラムが選ぶ・この逸品

松田共司さんの傑作

松田共司さんの傑作

2015年8月 高梨武晃
製作地:沖縄県読谷村

「民藝の教科書」の取材に同行し、
沖縄を久野さんと一緒に回らせていただいたことがあります。
上焼や荒焼の様々な窯元、再生ガラスでつくるガラス工房、沖縄特有の形を生み出す竹細工と。

確か共司さんのご自宅でお茶を頂いていた時、
ふと久野恵一さんがもやい工藝で開かれた「もやい工藝40周年の会」で出された一枚の皿について話しました。

「今のフォーラムメンバーは目がないよ。何故ならあんな傑作が残るんだから」

そう言われても、どの皿かピンとこない私に、久野さんは呆れていたことでしょう。
沖縄から戻った私はすぐさまもやい工藝に向かい、件の皿をスタッフの方に頼み見せていただき、
そして手に入れました。

当時の私は久野さんの、
「持っておいたほうが良いものだ」
という言葉を信じ、
そこから久野さんの目を吸収しようと必死だったのです。

径約33pのこの皿、先ず目に着くのは迫力のある形。
沖縄特有の深さがあり、それは皿と鉢の間。
きっと、共司さんのよく反る掌が生んだ形でしょう。
人の体からは自然と有機的な形が生まれるものです。
その器体に生掛けをし、
荒い飛び鉋をかけ、飴釉、おーぐすやー(緑釉)が流し掛けられています。

特段珍しい技法、珍しい釉が使われているわけではありません。
しかし訓練度の高い確かな技術が生む優れた器体。
窯の力で溶け、自然に流れた釉が生む濃淡。
大胆に中央で交差する飴と緑に作り手のセンスが光ります。
それらがバランス良く納まり、この皿を傑作へと導いているのではないでしょうか。

我が家では普段は飾り棚で目を楽しませ、
来客時は食卓で料理を引き立たせて、生活を明るいものにしてくれます。

初見では気づけなかった美しさ。
今ならきちんと選べるのか?
久野さんの「目がないよ」に、
「そんなことないですよ!精進します!」
と言えるのか?
ものを見ると言う事を、私にはっきりと意識させてくれた傑作であり、逸品です。