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フォーラムが選ぶ・この逸品

小代焼ふもと窯、井上泰秋さんの鉢

小代焼ふもと窯、井上泰秋さんの鉢

2016年2月 今野昭彦
製作地:熊本県荒尾市

質実剛健、という言葉が当てはまる鉢である。
縁を入れても7寸ほどの、さほど大きな鉢ではないが、見た目にはどっしりと安定感がある。しかし決して肉厚ではない。無駄な贅肉はなく、硬く引き締まっている。器に時々「ぼってりとした」という言葉が使われることがあるが、この鉢にその表現は当てはまらない。

高台から縁にかけては丸みを帯び、柔らかさを残しながらも、少しもたるみがない。重力に負けることなく、上に引っ張られている。そして縁も、わずかにぐっと上に持ち上げられている。

鉢の内側は、縁から底にかけての傾斜が、何故か外側よりもきつく見える。
そこで親指と人差し指で、縁から底までの厚みを確認してみる。すると、縁や縁の近辺の厚みよりも、底に近いあたりの厚みのほうがわずかに薄いことが分かる。おそらくあえてそうしている。以前、小鹿田の坂本浩二さんが、皿を作る時には縁のほうに厚みを持たせ、中心のほうは薄く作る、ということを言っていた。それは中心のほうに厚みを持たせてしまうと、皿を持った時に重く感じてしまうからだ。しかし中心は裏から高台の削りを入れるところ。削りが甘いと厚みが出てしまうのだが、底が抜けてしまうおそれもあるので、深く削るのは難しい。しかし上手い作り手は、削りを深く入れることができる。上手い作り手とそうでない作り手の間でそうしたところに差が出てくる。この鉢ももちろん高台はしっかりと削られており、底に厚みを感じさせない。

この流し掛けこそは、小代の伝統である。しかし、形がしっかりしているからこそ、この流し掛けが生きる。井上泰秋さんは優れた職人であるうえに、小代の伝統を守り続けている。その技術と真念が、このような骨格のある仕事を生み出す。