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フォーラムが選ぶ・この逸品

坂本浩二君50歳の大壺

坂本浩二君50歳の大壺

2019年2月 吉田芳人
製作地:大分県日田市

 フォーラムのメンバーであればだれでも知っている坂本浩二君は、小鹿田焼を代表する陶工の一人です。フォーラム創成期に、久野さんから力のある作り手で大物づくりに良いものがあるからと言われていました。浩二君の大物に最初に出会ったのは、平成16年(2004)鳴子「日本の手仕事優品展」に出展されたトビカンナ飴青打掛3斗5升壺でした。表面の打掛具合、トビカンナの力強さ、全体として堂々とした形に魅了され購入しました。この壺は、浩二君が25歳の時「日本民藝館賞」に選ばれた2斗壺を久野さんが小鹿田で製作できる最も大きな3斗5升壺にしたものでした。小鹿田焼の良さは、作り手が伝統を守り、伝統が継承されている健全性にあることです。これを形で表した壺でした。大壺は大量に作れるものではない為、何とか優れた陶工の技術が継承されるように使い手として支援しなければならない思いに駆られた。

「日本民藝館賞」受賞作品 (民藝505号より)

鳴子「日本の手仕事優品展」出展品

 その後、平成29年(2017)全国フォーラムin岩手の懇親会の席で浩二君と話が盛り上がり、私は「大きい壺を造ってよ」とお願いしたら、「もう50歳になるので、節目になる物を造りたい」と返答がありました。私は3斗5升の大きさを伝え、「どのようなものにするか浩二君の任せ浩二君が思う物を作ってほしい」と伝えました。今後、浩二君が年を重ねる上で貴重な機会と思えたため、どんな物が出来るのか期待して待つことにした。
 平成31年(2019)1月に家に届いた3斗5升壺は、浩二君らしく造りがきれいで丁寧な仕事でした。大壺はトビカンナだけで打掛も流しもないシンプルなものでした。本来の形を見てほしい浩二君の意図が伝わってきました。もやい工芸のHさんに聞いたところ、岩手フォーラムの時、「日本の手仕事をつなぐ旅」展会場に浩二君の壺と茂木さんの壺が並んで展示されているのを、浩二君がひと時眺めていたと聞き、小鹿田の先輩の背を追うひたむきな姿勢を感じました。また、浩二君が30歳の時二度目の「日本民藝館賞」を取った時に出展していたトビカンナ3斗5升壺も、白だけの大壺であることから50歳の節目に製作する物もこれを意識したのではないかと想像されます。

岩手「日本の手仕事をつなぐ旅」展 坂本茂木さん制作の大壺

「日本民藝館賞」受賞作品 (民藝565号より)

坂本浩二君50歳の大壺

 久野さんは、良い大壺のかたちについて「Kuno×Kunoの手仕事良品」の中で、肩のラインが膨らめば膨らむほど中にはたくさんの物を入れられる。肩の膨らみは物を収納するという容器としての「用の美」を示すもので、製法としてロクロの上で厚くつくった物を引っ張り上げながら形を整えるには体力と技術が必要と述べています。全体の形を印象付けるのが、ロクロ引きの手跡、焼き上がり、肩の張り、底からの裾の立上り具合です。陶工それぞれ個性があるため、寸法だけで比較するのは適切ではないかもしれませんが、全体の形を知るうえで、あえて浩二君30代の大壺と50歳の大壺の違いを比較してみました。壺径は共に53cm、高さは65cmから61cmと4cm低くなっています。口縁、底の直径は共に2cm広くなっています。大きな違いは肩の張り位置です。30代の壺は全体高さの半分より高めですが、50歳の壺は高さのほぼ半分の位置になっています。このことにより、全体のシルエットが丸みを帯びゆったりとした雰囲気になりました。ロクロ引きの手跡もなめらかになり、トビカンナの調子も良く、静かな品格を感じさせます。浩二君は基本技術がしっかりしているため、年齢に応じ健やかな美しい物が生まれる仕事を続けるでしょう。さらに、伝統から学び、体に消化して自分のものとして制作する挑戦も続けてもらいたいものだ。
 現在、浩二君には拓磨君という息子がいて、浩二君とロクロを並べて挽いています。浩二君の仕事を見ながら拓磨君も技術を身に着け、今後小鹿田を代表する陶工に成長する姿を見られることを期待しています。