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学習会・イベント報告

土曜の夕べ・月例学習会「紅型について1」

土曜の夕べ・月例学習会「紅型について1」

2007年3月24日
語り手:大橋正芳

〈紅型の染め方〉

 紅型は型紙を使った染め物で、藍染の唐草と同じ型染の一つだ。型染は日本で特に発達した染色技術で、布に型紙を使って糊を置き、糊が乾いたら藍で染めると藍色の地に模様が白く染め抜かれる。これが型染の基本で、紅型のように多彩色で染める型染はほとんどなく、一枚の型紙で多色を染める紅型は独特の技法といえる。どうしてこうした方法が発達したかは解らないが、型紙をつかった方法は唐草などの型染からの影響ではないだろうか。同時に友禅の技法や模様の構成の仕方も沖縄に入っているのではないかと思う。友禅は世界でも類を見ない絵のような模様を染めた染物で、自由な形で色数も制限がない。沖縄の人にとってはその多彩色が刺激的だったのではないかと思われる。
 友禅の染色方法は、筒に糊を入れて先っちょに真鍮の金具を付けて糸のように細く出るようにして模様の輪郭をなぞり、輪郭の中を一色一色、色を差し分けてゆく。染料は水に溶かして使うのでそのままでは布に滲んでしまうため、染色の技術はいかにして滲まないようにするか、つまりどうやって染まらない部分をつくり出すかという歴史でもあったと言える。友禅では糊で土手をつくることで滲みを防いでいた。
 友禅はどんな絵柄でもできるが、一筆一筆色を染めるために手間がかかる。しかし沖縄の人たちはたった一枚の型紙で友禅と同じ豊かな模様を作ってしまった。同じ物をいくつも作れる量産であるにもかかわらず、友禅模様が持っている自由さ、カラフルさをもっと簡便な方法で作る事ができた。型紙に置き換えたところ、これが沖縄の人たちの凄いところである。

〈モチーフ〉

 紅型の模様をつぶさに見て行くと、モチーフが沖縄に由来した模様ではないことに気付く。模様の構成に中国の影響はほとんどなく、京都を中心にした染織模様の影響が大きい。モチーフは友禅などから学んだのか、明らかに沖縄にはない動植物が盛り込まれている。牡丹、杜若、水仙、桜、などをいっしょにした模様の構成があり、沖縄の季節は京都のような四季の変化と違うのでおかまいなしに盛り込んだのだろう、とよく言われている。しかし2002年の2月に沖縄に行った際に、いろんな植物が一斉に咲いているのを見て、四季を勝手にごちゃ混ぜにしたのではなく、四季が違うから四季の花が混在しているのは当たり前ではないかと思った。

〈基本色〉

 色使いは友禅とは圧倒的に違い、色彩のベースに朱色がある。沖縄に元々はビンガタという言い方はなく、型を使った染物をカタチキと呼んだ。カタチキの中でも多色のものをビンガタと言い、漢字は後で与えられた。大事な色彩のベースに朱色が使われているので紅型となったとも言われるが、紅型を目標に独創的な染色の世界を築いた芹沢C介は、色を差す時には朱色からはじめるというくらいこの色をものすごく大事にしたと聞いた。
 紅型の中でも黄色地のものは基本的に王様が着るもので、これは中国からの影響が大きい。天皇陛下も黄櫨染御袍(こうろぜんのほう)といって、櫨(はぜ)の木の皮で染めた黄色の袍といった形は天皇しか着られなかった。

〈模様の構成〉

 紅型の模様で、特に山を構成の基本にした模様に特徴的なものがある。山には家があり、山の上には空があり、鶴が舞っていて……という風に一つの風景のようでもあり、しかし別の視点から見ると山は空であり空が山であるようなもう一つの風景を構成している。また、それを無視して見てみると、山や空は地をきれいに配色するために使われた道具のようでもある。連続されていても破綻のない色の配分をしているのが凄いと思う。
 このような風景をデザインした染物は、世界にそれほど多くない。日本では友禅や茶屋辻という染物に、御所の風景や庭園の風景を一つの絵柄にした着物が見られる。積極的に風景を模様に選んでいるのは日本独特の染物の世界。それは紅型の一つの典型でもあり、巧くデザインされ最高の構成がされているのが凄い。模様の中身を視ながら全体の構成を見て行くと面白い。芹沢もこの模様の構成を実に巧みに使っている。

〈紅型と藍型〉

 紅型の意味は、朱色を中心に使っているからというのもあるが、沖縄は多彩色なものを総称して紅型(ビンガタ)と呼んでいる。それに対して基本的には藍一色のものを藍型(エーガタ)といい、また別の世界を作っている。もとは型附(カタチキ)と呼ばれていて、芹沢の調査報告にも型附と書いてある。両方の型紙は全く同じものだが、色の指分け方で、違うものができてくる。
 藍型には墨で色を差したものがあり、糊を置いたとこは白いまま、墨を置いたところは後で藍と重なって深い藍の濃淡が出る。藍の濃淡と白とのコントラストが実に清々しい。藍の型染では暗い印象になる場合があるけれど、沖縄のは明るい。構成の仕方だと思うがそういう魅力がある。唐草のような重さが一切無い。

〈ウチクイ/ツツガキ〉

 沖縄の染色の一つにウチクイがある。筒描(ツツガキ)と呼ばれる染物の一つで、染め方は友禅と共通していて、筒の中に糊を入れて模様を一気に書き、糊の土手の中に色を差し、差し終わった色の部分をもう一度糊で全部塞ぐ。それから藍瓶に浸けると地色が染まり、色を指したところはその色のままで、はじめに描いた線は白く模様の骨格を構成することになる。