手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

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プレス掲載

朝日新聞 生活欄(くらし考)手仕事 進化の可能性は?

朝日新聞 生活欄(くらし考)手仕事 進化の可能性は?

2010年2月14日(日)朝日新聞 生活欄(くらし考)掲載

日常の「美」掘り起こす
作り手と使い手結ぶ時代
固定観念、若者が破る

2010.2.14 朝日新聞 文化欄(くらし考)

くらし考

—久野 恵一さんと

 20代の頃から1年の3分の2は手仕事の現場を旅する生活。日本には、まだまだ見たことのない物と、それを作る人がいるから。

 —民芸の活動家を自認しています。

 美大の学生時代に民俗学者の宮本常一先生に出会い、各地の調査を手伝うなかで民具や織物にふれました。古い蔵に潜り込むと、ほこりをかぶった物の中にハッと輝く力がある。日常から生まれた「美」を掘り起こす、民芸にたどりつきました。好きな旅をしつつ生活費を稼ごうと、仲間と鎌倉で3坪の店を始めたのが70年代半ばです。

 —それから40年近く。

 当初から竹細工など、「あと10年で職人がいなくなる」と聞かされましたから、ずうっと危機なんですね。

 日本で手仕事が育った背景には、土地同士の切磋琢磨がありました。行商人が、行った先で他人の火にあたりながら前の産地で聞いたことを話す。次の宿で新たな話が加わる。集積した知恵を風土に合わせて工夫した。それが大量生産の工業品を前に、作家性を高めよう、よそで売れている物を作ろうとして、骨格を失いました。

 —8年前から主宰している「手仕事フォーラム」は、民芸店主や研究者、ライターが中心の集りです。

 物は探し尽くしたと思い込んでいましたが、動けば新しい発見がある。今は作り手と使い手が直接つながるネットの時代。でも産地に「こんな物が欲しい」と働きかけ、消費者に「こんな物を使っては」と説得できる担い手は必要です。窯元でひっそり働く職人の中に抜きんでた技術の人がいる。いい出口を作れば、生き延びられます。

 島根に「石見焼」という塩や酸に強い焼き物がある。みそを入れて野外に並べた瓶が、ポリ容器にとって代わられるとき、どうするか。形はそのまま釉薬を施し、室内において楽しむ新たな使い手と結びつけました。

 —若い世代が興味を持っている。

 祖父母の暮らしの匂いにひかれるのかもしれません。都心のセレクトショップに並べる手伝いもしますが、正直それほど売れません。ただ、私が開く勉強会に集まるのは30代ばかり。知りたいという欲求は強い。彼らは自分が使いたいという基準に合わなければ、どんなにいいものでも関心を示さない。もどかしさの一方で、旧世代の固定観念を破っていき期待もある。好きなスニーカーならいくらでも払う、その感覚は面白いですよ。

 —「運動」になりますか?

 いま、進めるのは普通のサラリーマンが買える家づくり。大工、建具、左官、畳、板金といった具合に家は手仕事の集大成でしょう。壁に和紙を張れば、紙の産地に需要が生まれ、そんな家で暮らす人は、家具や食器も、いい加減には選べなくなる。将来まで手仕事の支援者です。住宅メーカーの製品と変わらない価格で実現させます。

 物を買うことは自分を買うこと。最初は誰かのすすめで選んでもいい。ただ、手にした時に落ち着くかどうか、分かるのは本人だけです。

(聞き手・長沢美津子)


くの・けいいち 1947年生まれ。手仕事フォーラム代表。日本民芸協会常任理事。神奈川県鎌倉市佐助で「もやい工芸」を経営。