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手仕事調査:北陸・甲信越地方

旧河内村 コツラ細工

旧河内村 コツラ細工

2011年10月28日
訪問地:石川県石川郡鶴来町

10月28日〜30日に越中八尾の桂樹舎/民族工芸館で日本手仕事優品展が開催されました。それに合わせ、手仕事調査へ向かうと言う久野恵一さんに同行させて頂きました。
目的は、鶴来〜白山麓旧河内村地域でのコツラ細工の現状と作り手の開拓及び調査です。

鶴来町は手取川の扇状地の扇頂に町があり、白山麓の玄関口にあたります。この石川県最大の河川の頂ですから、とにかく水がおいしい。菊姫、萬歳楽、手取川などおいしい日本酒を造る古い酒造元が多いのも納得です。早速、地元でも有名な「こいしや」でラーメンを食します。おいしい。水が旨いとラーメンも旨いです。

コツラ細工とはマタタビを使った伝統工芸のことです。鶴来から上流にあがった旧河内村には昔、数十人の作り手がいたとのことですが、今は数人になってしまい、村による後継者育成も行われているとのことでした。

まずは、荒物屋のTさんを訪ねます。

 

こちらでは作り手の現状を聞きます。もしかしたら、新たな作り手の情報を得ることができるかもしれないからです。

店の奥へこころよく案内して頂く。
表からは全く分からなかった家の奥は、まるで蔵のようでした。
今は物置になっていましたが、大きな木材を使った、北陸特有の頑丈な作りです。松でしょうか。立派な梁ですね。

しかし残念ながら、ますます先細りになる現状を知ります。
新たな職人どころか、本当に作り手が少なくなったこと。商品も思うように仕入れができなくなっていることなどを聞かされます。

はっと気付くと、天井裏に大量のコツラ細工が!
Tさんはやがてなくなる事を見越して、大量の在庫を持つことにしたと言います。決して安売りはしないともおっしゃっていました。

右は80年使用のコツラソウケ(米あげ笊)。80年!いい色です。左は今のもの。こんなにも長い間、美しく保てるものが失われていくのはつらいですね。

町を離れ、山に入り、高度を上げて行きます。途中、久野さんが昔に訪ねた作り手さんの所に寄りますが、ご高齢で体力が続かなくなったこと、材料が手に入らなくなったことなどあり、今はあまり作られてないご様子です。なんとか技術を残してもらう為にも買い支えることもできず、残念な気持ちでこちらのお宅を後にします。

さらに山奥へと車をすすめ、旧河内村のMさんを訪ねます。
あいにくご不在でしたが、隣接する売店で、現在のお仕事を見る事ができました。
その時です。「これはすごい!」久野さんが興奮しながら手に取ったものはコツラで作られた、鉈袋でした。説明を受けるまで、それがコツラでできたものか分かりませんでした。というのもコツラは水きれが良い為、ザルやソウケのように台所か水仕事で使う、薄い素材で編まれたものが多かった為です。

ところがこの鉈袋は、職人が日常山で使う30cm近い鉈を入れる為、コツラの厚い樹皮部がふんだんに使われ編まれています。口も鉈の重さを受け止める為、ぶ厚く頑丈に作られ、おまけに木材の受けまで付いています。嘴状に先の曲がった鉈を頻繁に出し入れする為だそうです。なんて力強いデザインだろう。と思いました。

その後、桂樹舎に戻り、久野さんが持ち帰った鉈袋を吉田桂介先生にいち早く見つかります。「これはすごい!」先生も驚かれます。「いいな!これは!久野くん有難う」97歳になっても、良いものをみると子供のように喜ばれる姿に久野さんも嬉しそうです。
あっと言う間に民族工芸館に飾られました。

久野さん曰く「いま現在、作られている実用品でこんなに素朴で力が強いものがあるとは嬉しいこと」

失われつつある現状がある中、こういうお仕事をされている方がいらっしゃるのを目のあたりにすると、はっと背筋が伸びる気がします。

なんとか、この素晴らしい手仕事が失われないようにしたいと思いました。


手仕事フォーラム会員 波賀望