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手仕事調査:関東地方

魅力的な女性から生まれる美しい蛤箒

魅力的な女性から生まれる美しい蛤箒

2013年8月21日
訪問地:栃木県鹿沼

栃木の丸山早苗さんが作られる蛤箒の取材に同行させて頂きました。
今回初めて蛤箒という名前を耳にし、
いったいどんな物なのかわからないまま伺いましたが見て納得。
ほうき草と柄の接続部がぷっくりと膨らんだ蛤の形をしています。

この蛤型は用途的意味ではなく美しさを求めて作られているそうで、
美しさを出すための材料作りに大変苦労をされているようでした。

 

材料の箒草は今まであまり研究がされておらず、
きちんとしたことがまだわかっていないそうで、
農家さんの実践と経験で作られていたそうです。

写真左が良い状態、右が芯立と言われる状態。
蛤箒には基本的に左の状態の物を使用しますが、
芯立の状態でも芯の部分を欠いて使うことができるものもあり、
経験と感覚で選別をされます。
(芯立で欠いた部分も小箒に生まれ変わります。)
蛤箒を美しくし上げるために茎がつぶれないように刈り取る必要があり、
全て手作業となりますが、この時期の作業は大変辛いものです。
刈り取りが終わるとすぐに『ユウクレ』という、これまたキツイ作業が待っています。

刈り取った箒草から昔ながらの脱穀機で穂先についている種を採り
(種は2年で発芽率が低下するため毎回採ることが重要)
約80度のお湯で5分間茹でて、干します。
宇都宮大学の学生さんが頑張って作業をされていました。

干す作業も天候に注意が必要です。
雨ざらしになると、材料の質の面では問題がありませんが、
シミができてしまい、美しさが損なわれます。
他にも多くの苦労があり、それを経て
やっと蛤箒を作る行程にはいれます。

お昼時でしたが、たっぷり2時間見学させて頂けました。
製作は天候次第で、仕込みは前日夜から始まります。
とても暑い日でしたが、材料が乾燥するためエアコンは禁止。
今回見せて頂いた作業は力が要り、男性の仕事で
綴じ・飾り付けが本来女性の仕事ですが、
丸山さんは一人で全部をこなします。

綺麗な形を作り出す重要部分。
削るだけでは、あのぷっくりした蛤は出せません。
製作中に切り落とした箒草の茎の部分を差し込んで形作っていました。

蛤部分完成。
蛤の形は子宮を模しており、縁起物だそうです。
この部分を作るために巻き付ける材料も
今は探してもなかなか同じものが見つからないそうで、
今後は麻紐でも挑戦されるそうです。

一般に販売されているものには海外の材料から作られたものも多くあります。
機械化が進んでいる中栽培されたものは材料の吟味がされておらず、
良いものを仕上げるのに適さない場合があります。
また国内で購入しても、国産と外国産のものを混ぜられることもあり、
信頼関係が築ける農家さんとのお付き合いが重要だと話されていました。

運良く継げたと話されていましたが、
運だけでなく裏にある大変な努力を知ることができました。
『蛤を本当に美しいと思う。』という言葉に、
本当に好きで好きで、多くの人に美しさを知ってほしい、
そして残していきたい、という思いを感じました。
その思いは宇都宮大学の学生さんにも伝わり、
今行っているボランティア以外にもお手伝いをしていきたいと
話されている学生さんもいるそうです。
私自身は初めて存在を知りましたが、
いろいろな箒がある中で、この蛤箒の美しさに共感してくれる人が
どこかで知り蛤箒に出逢えますように・・・。

 

手仕事フォーラム会員 宮本由美子