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手仕事調査:九州地方

上米良鍛冶屋

上米良鍛冶屋

2004年7月3日
訪問地:熊本県球磨郡湯前町

  梅雨明け間近の九州で、鋼でできた白い刃先が太陽光線浴びて鋭く光っていました。それは、光を全て吸収してしまいそうな程真っ黒な黒錆のついた根元の部分と対照的です。強さを感じさせる黒と、鋭い白、そして様々な用途のための形、「切る 」という行為を真っ直ぐに連想させる刃物がそこにはありました。
 今、湯前には3軒、近隣まで入れると12軒の鍛冶屋があるそうです。この地域の鍛冶製品作りは、ここで元々行われていたものと、土佐から来た人によって伝えられたものが融合してます。地域の人々の用途に合わせて製作しているうちに林業 から農業、何でも作れる鍛冶屋集団となりました。
 そのような中で鍛冶製品作りをしてきた上米良さんが刃物を作る時に大切にしているのは 1、切れ味 2、耐久性 3、使いやすさ と聞きました。使いやすさについて言えば、最初から使いやすいものは無く自分で使っているうちに段々馴らしていくという風にするとのこと。また、切れ味も最初からよい、とか、ずっとよい、といったことは無く、最初は硬かったものが使っているうちに徐々によくなり、あるところまで来ると少しずつ落ちてくる――人間の一生と同じです、と上米良さんは言います。
ものや情報が忙しく飛び交う最近の生活では、何だか即時的な使いやすさやきれいさをつい、求めることがあるように思いますが「段々に」、「徐々に」よく、美しくなっていくことが本当は自然なのでしょう。古くから、作る人と使う人が創りあげてきた刃物たちが並ぶ鍛冶屋さんでそう思うのでした。

 

手仕事フォーラム  武井治美