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手仕事調査:九州地方

トグチをとる

トグチをとる

2010年6月21日
訪問地:大分県日田市

6月21日の小鹿田皿山行は、今年になって5度目です。福岡県朝倉市に手仕事フォーラムの直営店『秋月』がオープンしたので、1時間で行ける大分県日田市の小鹿田皿山にもこれから毎月通うことになります。

窯出しの予定があったのでこの日に皿山へ行ったのですが、共同窯の火入れが遅れていて、午前中はまだ窯詰めの最中でした。わが仲間の坂本浩二、黒木昌伸両君は今回の窯が同じ組で、それぞれ二番窯と四番窯の袋に製品詰めを終了し、袋の入り口を閉じる壁づくりの作業にかかっているところでした。これをここ小鹿田では「トグチをとる」といいます。「戸口を閉める」という意味でしょう。

この作業、見た目以上に手間がかかり面倒なもの。各窯元は、前回窯出ししたさいに崩したレンガや耐火性の棚板のハギレをとっておき、次の窯焚きにも使うのですが、トグチを崩したさいにレンガや棚板は削られ、欠け、ゴロ石状態にもなり、数も足りなくなって前回とおなじようにはいかないのです。

予め、薪を投げ入れる「タキ口」と火の具合を視認するための「メダマ(目玉)」という名の窓口をそれぞれ空けておきます。この口づくりがやっかいで、口を閉じるために蓋となるレンガをスムーズにはめ込めるようにしておくのですが、小鹿田では当然、前に窯出しした窯元が崩したレンガの残骸などを利用したり、同じ組の隣の窯元と余ったものを譲り合って使います。時間はかかるのですが、それで何とかなるのが小鹿田なのでしょう。

おもしろいのは、窯の袋の壁づくりも人それぞれだとわかるところです。

浩二君は長年の感もあってか、手慣れて早いのですが、きちっとした組み方で整然ときれいな仕上げを試みます。下から積み上げていってもアーチの上部には隙ができるので、棚板のハギレをさらに砕いて埋め合わせ、あとは泥土でのメジ止めにまかせます。それでもハギレ板が飛びでてるのが気になるようでした。昌伸君も、浩二君と同じようにきちっとした組み方をしますが、全体に使うレンガの数量、大きさの寸法を頭のなかに入れておき、まるで設計図ができているかのようです。いまでは皿山の工人らしい良い意味で粗野な気質になってはいますが、壁づくりにも、なるほど、理科系らしい彼の資質がかいま見えて感心しました。

ちなみに柳瀬朝夫さんの壁づくりは、まるで昔の李朝の陶人のごとく、合わなくても適当に合わせ、隙があってもレンガ片を押し込んで何とかしてしまい、泥土で覆ってあとは火任せといった具合です。窯焚きは、作業の全体を通してトータルで、工人の性格、気質に左右されるものですが、わりと彼等自身は気がついていないようです。

手仕事フォーラム 久野恵一