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手仕事調査:九州地方

肥前竹細工 民陶の里でつくられる真竹細工

肥前竹細工 民陶の里でつくられる真竹細工

2013年3月11日
訪問地:佐賀県武雄市

去る1月23日、グラフィック社「民藝の教科書C カゴとザル(仮称)」の取材で長崎佐賀両県の竹細工を訪ねました。
佐世保・野田利治さんの次に訪れたのが、武雄市多々良で竹細工を専業とする池田孝雄さん78歳。
今は片手間になりましたが、10年ほど前までは専業としてばりばりの竹細工師の名人といってもいいかもしれません。
息子さんは手作業が苦手で販売に廻り、父のつくった竹製品のみならず九州各地、また海外のものまで仕入れて、九州管内はもとより中四国まで出張販売するそうです。昔ながらに続く市や祭り、また物産展などで出会うこともあるかもしれません。
池田さんは器用な方で、またものづくりが小さいときから好きだったそうで、20年ほど前からみかんづくりにも精を出し、最近では品評会に出し新種のみかんを出すのも重きとしているそうです。
実際、この方のお宅の仕事場の前には、規格外の様々な種類のみかんがネットに入れられ売られていており、食べると甘みのあり、それぞれ癖のある面白い特異なみかんを食することも出来ます。
今回は取材ということもあってまだまだ足腰の元気な池田さんにお願いし、真竹(クレタケ)と呼ぶ竹の採取に山に入ることになりました。
山中をおよそ3キロほど、車一台道幅ぎりぎりの泥んこの走行。
しかし私の車はパジェロ、まさに4輪駆動の力発揮、嬉しくてしょうがなかったです。
いとも簡単に2km半ほど登ると、突如杉の森林地帯に入り、間伐材の作業中に遭遇。
キャタピラーに塞がれ、どいてもらうのに30分かかってしまいました。
キャタピラーでさえ道幅よりややはみ出すほどのところ。
登りきった所に小高い果樹園が広がり、池田さんの活躍されるみかん園、そして柿園でした。
そこ車を止めて5分ほど歩くと、竹林というほどではなく、杉檜の山林の中にすくっと長くのびた真竹がそこそこに林立していました。長さおよそ20m余あるでしょう。
見るからに質の良い竹で、なるほどこれを切りとり竹製品に用いることがわかりました。
長い間この仕事に携わってきましたが、竹の質を見分ける目は持ち合わせません。
もちろん孟宗なのか、真竹なのか、破竹なのかはわかりますが、特に真竹と破竹の使い方など地域性によって相違し、どちらが使いやすいのかもその地域の方々の意見を聞くことで納得するしかありません。
今回の取材でわかったことは、竹製品に用いる用材のうち真竹は本体なら3〜5年。縁に巻くのは1年の若い竹。これは柔らかく粘りがあるからだそうです。破竹は4〜6年が妥当で、縁巻きは3年ものだそうです。
同じ武雄市の西川登町、かつての竹生産地ではこの破竹を用い、佐世保の野田さんもここ出身であることから破竹で竹製品をつくります。池田さんのカゴ製品は多くの種類が西川登の製品と同じ種類を使いますが真竹です。ただし縁巻きはどちらも左巻き、この辺に民俗性に外来文化が潜んでいると推測しました。
数本竹を切っていただき、写真に収め、工房に戻りつくりかけの面白いカゴを見つけました。目が空き、腰の部分がござ目で密に編んでいます。やや古くなったヒゴ(この地方ではヘゴと呼ばれる)で編んでいます。里芋洗いというのだそうで、いわゆる川などに里芋をいっぱいつめて浸すと、川の水の勢いで中の泥がきれいにとれ、皮も剥離するそうです。そのためにこちら方面からの注文があるとのこと。かつて日田竹細工の森さんに芋洗いカゴを見せてもらい、それをメテボといってこれを改良して脱衣カゴをつくってもらいましたが、用途としては同じでも形体が違うのに驚きです。九州という狭い範囲で、しかも近くの県でありながら文化の相違を身近に感じることが出来ました。
多々良というこの地は50年ほど前まで多々良焼という名で大甕などのいわゆる荒陶器づくりで知られ、この地域の田畑では肥料入れで使っていた甕を見かけることがあります。近年この甕をきれいに洗ったのでしょうか、骨董屋で売られ飲食店などの飾りで見かけることもあるのですから何のための容器か知ったら驚くことでしょう。この多々良焼は文禄・慶長の役、朝鮮半島から連行され、焼き物づくりをさせられた陶工たちによって開かれた窯としても知られ、その証としてたたき技法による成形があります。この地でも窯元が1件あり、たたき技法を得意としていますが、美術陶芸家として名をなしている方で、かつての民衆陶器としての焼物づくりではありません。この地に住む多くの人が焼き物づくりに従事し、膨大な量の農工業用の大甕類をつくってきた地とは思えないほど静かな田園地帯が残っていて風情がありました。
池田さんには「民藝の教科書」に載せるために角メゴというカゴをつくってもらいました。このカゴは2つで一荷という運搬する際に用いられるカゴですが、四角い形で底がイカダ底。荒い使い方が本来ですが、このカゴの形に見入られた。ヒゴを磨いていただき、更に丁寧につくってもらいました。
いずれこの過程も「民藝の教科書」でご披露されることとなるでしょう。

 

手仕事フォーラム 久野恵一