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手仕事調査:沖縄地方

げんちゃんの沖縄建物調査報告

げんちゃんの沖縄建物調査報告

2011年1月28日〜2月1日
訪問地:沖縄

沖縄の民家−中村家住宅

 

 中村家住宅は奇跡的に沖縄戦の戦火を免れ、戦前の沖縄の住居建築の特色をすべて備えている建物です。

 

ヒンプン(屏風門)
沖縄の伝統的な民家には敷地の周囲を琉球石灰岩で積んだ石垣を巡らせ、台風などの強い風雨から建物を守るように造られています。そして通りから敷地に入る部分に必ずヒンプンが設けられています。

 

このヒンプンは通りから直接家の中が見えないようにするための目隠しとしての役割と悪鬼の侵入を防ぐための魔除けとしての役割があります。中国の影響を強く受け、ヒンプンの位置そして建物の配置も風水の考えに沿って決められています。

 

中村家では琉球石灰岩の大きな切石が積んであります。他の地域で見たヒンプンには石垣だったり、生け垣や板塀など色々な種類のヒンプンがありました。

 

中村家(中庭)から

中庭から正面にウフヤ(母屋)右側がアシャギ(離れ座敷)左側が高倉の配置になります。柱の立っている部分がアマハジ(雨端)です。

 

このアマハジは沖縄の民家にはほとんど設けられています。沖縄には玄関という概念はなく座敷と外部の土間との間には木戸(雨戸)しかありません。横なぐりの雨風を防ぐには庇を深くする必要があり、梅雨時には蒸し暑さをしのぐために雨戸を開放していました。

 

このアマハジは家の周囲に日影をつくり、輻射熱を遮り沖縄の厳しい暑さを遮る効果があり沖縄の民家の特色と言えます。

 

アシャギ(離れ座敷)内部

壁も天井も建具も内装は全部木製です。柱はチャーギ(イヌマキ)が使用されています。福岡の秋月周辺にもイヌマキは多くあります。

 

畳は琉球畳と言って縁(畳縁)のない物だと思っていたのですが、普通のヘリ付き畳でした。部屋の大きさは6畳より大きな部屋が許されていなかったので部屋割りは大きくありません。

画像の左に写っている皿は 小鹿田の坂本茂木さんの皿だそうです。何故ここにあるかは謎だそうです。

 

トゥングワ(台所)

かまどです。右にあるハシゴで小屋裏部屋へ登ります。

 

かまど上部にある煙抜きです。構造材はそれほど大きな木材は使われていませんでした。垂木(たるき)は丸太をそのまま使っています。(古い建物では本土でも普通に使っています)おもしろかったのは垂木の上によしずのような物を敷いて、その上に漆喰(しっくい)が塗ってありました。

これはよしずで通気・漆喰で断熱の役割をすると思われ、通気には特に気を遣って建てられているようです。

 

台所上部の通気用の小屋根

力強く良いアクセントになっています。左の棟の下にある数本のブロックのような物も通気口です。

 

棟換気

屋根の棟換気です。棟部分に換気用だと思われる細工がしてありました。小屋裏の熱気を外部に排出するように、反対に強い雨が吹き込まないように適度な長さで葺かれています。デザイン的にも目立たないようにとてもよく考えられています。

 

瓦は赤瓦を漆喰で固めています。これは台風で瓦が飛ばないようにしっかりと固定するためです。

 

フール(豚小屋)

アーチ型の三基連続の石に囲われた豚の飼育所。石の凹みの奥行きが浅かったので豚さんは雨風が凌げたのかなぁと少し疑問でした。

フールには人の便所も付属しています。豚にその排泄物を食べさせて、上手く処理していました。

 

井戸とその後に高倉

井戸の上部のつるべを引っかけてある梁のデザインは中々しゃれていました。後にある高倉の屋根の軒裏部分の傾斜はネズミ返しのために傾斜を付けられているそうです。

 

この中村家は戦火を免れられたことと、家の周囲の地盤面を琉球石灰岩で敷き詰めて湿気やシロアリから守ったこと。換気を十分取り常に通風に心がけたことが今でもこのように保存状態が良く残っている理由だと思います。

建物は良いのですがなかに置いてある物や照明器具などはもう少し気を遣って家にあった物を取り付けてもらえればよりよくなるのに残念です。

 

沖縄の民家−浜比嘉島

 

沖縄本島 南東部に位置し、うるま市から海中道路を通って浜比嘉島を訪れました。ここにはまだ伝統的な民家が残っているとの事でした。

 

中村家と違いそれぞれの民家は人が住んでいますので通りから覗く程度でしたが、ヒンプンや赤瓦など沖縄独特の民家を見ることが出来ました。

 

 

生け垣で出来たヒンプン



 

板塀で出来たヒンプン



 

一枚の大きな石を組み合わせたヒンプン(吉本家)



 

民家を囲う琉球石灰岩を積んだ石垣


角は風の通りを良くするように丸く削った石を積んであります。沖縄各地にあるグスク(城)の城壁の角も丸く曲線を描いています。

 

琉球石灰岩は沖縄の土地の30%を占めている地層で、容易に入手することが出来ます。民家の石垣・グスクの城壁・墓所の壁や歩道の石畳など、どこでも目にすることが出来ます。

 

島のあちこちに敷かれている砂利はみな珊瑚だったのには驚きました。その珊瑚は浜辺から運んで敷き詰めたそうです。また、これはハブよけにもなるそうです。

 

 

浜比嘉島 吉本家 跡地


うるま市の重要文化税に指定されていた「吉本家」は2010年4月に火災で全焼してしまったそうです。この住まいには当時96歳のおばあさんが住んでいたそうですが、出火当時外出していたために難を逃れたそうです。

 

今回の旅で私たちが訪れたときには基礎石しか無く、貴重な建物が焼失してしまい非常に残念でなりませんでした。

 

このように沖縄の伝統的な民家は少しずつ失われています。いえ、ほとんど残っていないと言って良いでしょう。

厳しい気候風土、材料となる木材が無いこと、シロアリなどの蟻害、等々沖縄の建物の99%は鉄筋コンクリートの建物になってしまいました。

 

琉球石灰岩で囲われた石垣・ヒンプン・赤瓦を漆喰で固めた屋根・アマハジ等、伝統的な家の作り方や沖縄の気候風土に合わせた沢山の知恵が集められた民家がコンクリートの味気ない家に取って代わってゆくのは残念に思えました。

また、自然の力で少しでも快適に過ごせるように考えられた沢山の知恵は、今回の旅でとても勉強になりました。

 

手仕事フォーラム 源野勝義