手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

ホーム>手仕事調査>山陰・山陽・四国地方>南国土佐の竹箕づくり

手仕事調査:山陰・山陽地方

南国土佐の竹箕づくり

南国土佐の竹箕づくり

2013年1月21日
訪問地:高知県土佐市

まだ制作者名の公表は出来ませんが、去る1月13日、高知から松山へ行く途中、土佐市に立ち寄りました。
以前レポートしましたが、いかにも南国の手仕事らしい箕をとある荒物店で発見し、店主につくり手を教えていただきたくお願いしたのですが、どうしても教えてくれませんでした。その後もこちら方面へ来ると、寄るのですが、ここからちょっと山に入ったところの人だというのみで、どうしても教えてくれません。訪れるたびに、新作の箕が店で販売されているので、制作者は過去の人ではなく、現在も仕事をしていることはわかります。
今回は時間に余裕があったため、なんとしてもこの周辺を動き回り探索しようとやってきました。
荒物店の店主に話しかけていると、なんと偶然にもそのつくり手らしき人が注文の件で店に入ってきました。ばつが悪そうな店主でしたが、「もしこれが欲しくても、このつくり手からではなく、あなたの店を通してからなので安心してください。この仕事は貴重で、このような竹細工をする人は日本中から消えてしまうので、どうしてもこの仕事を残したいから」といい、「何としてでもこの方の仕事場へ行きたい」とお願いしました。店主もしぶしぶでしたが了解をしてくれ、そのかわりMさんという方のお宅にまで同行させられてしまいました。

店で売られている 箕

Mさん宅は、なんとこの店からそう遠くない田舎の住宅街の中にあり、わりと恵まれた生活をされているようで立派なお宅。
階下のコンクリートで囲まれた駐車場を利用して仕事場にしています。

Mさん宅
仕事場

Mさんは昭和10年生まれ、現在77歳。驚いたのは箕を作り始めたのは8年前からのことだそうです。
代々竹細工を家業としてきたので、若い頃から手伝ったこともあったそうで、いわば門前の小僧のごとくなのでしょう。やはり昔とったキネヅカの人に共通した傾向ですが、小さいときから器用で細かい仕事が好きだったそうです。
成人してからは土木関係の仕事をしていたそうですが、10年ほど前、景気後退と高年齢から退社することとなり、しばらくはぶらぶらしていたそうです。手で何か仕事をしたいとの念いが強く、昔つくっていた箕を思い出し、自分で材料を集め作ってみたところ、自分なりに納得したものが出来、自信を深めたと。近所の人に見せたところ、農作業に使ってくれたそうです。
この噂を聞きつけた荒物店主が、早速この店で注文を受けては、Mさんに依頼し現在にいったたそうです。

コンクリート壁に近所から頼まれたカゴ注文を白墨で
Mさんと土佐箕

この箕は写真のとおり、竹のみを用いて縁に棕櫚を当ててます。
これは箕を扱うときの持ち手となり、竹に直接手を当てる際、怪我をしないための配慮からだと思います。しかも縁を締めるのにカズラ蔓で括っていることも特徴で風情があります。以前見たときは銅金で巻いていたことからがっかりしたのですが、今回はカズラで巻いていて針金を見せない工夫もしています。このようなつくりは、この人自身に製作上での配慮が働くからでしょう。

竹はハチク
持ち手が当たる箇所に用いるシュロ

更にMさんは米揚げ笊なども作れるそうで、作業場にあったつくりかけの米上げザルは網代編みでなかなかきれいに仕上がっています。温厚な人柄で対応も良く話しも好きでした。
ところで、仕事場には日本民具学会の「西日本の箕調査報告書」の冊子があり、すでにここの箕を2年ほど前に調査されていたということです。私どもは情報を持たないため民俗学研究の方にはかないません。

   
アジロ編み
うなぎ採りカゴも作る
米上げ笊 いずれ縁巻きをカヅラ蔓で
店で売られている収穫カゴ

箕は農具であり民具ですが、しっかりしたつくりと縁の棕櫚とカズラを用い、編み組みも網代で編むことに、このもののポイントがあります。実用のみならず、見るにつけ、ここちよさを私どもは感じてしまうのです。民藝の品として、手仕事の品として、推薦したいと思うのでした。
僅か8年前にとりくんで、すでにきちんとした仕事ができる人の存在を考えると、日本各地には竹細工ばかりでなく他の手仕事もまだまだ健全なものづくりの人がおられるのかもしれません。今後とも更に各地を探訪し、発掘・発見の旅、暮らしに寄り添う手仕事の良品に仕上げていく方向に進まなければならないと思いました。新たな注文もしましたので、出来上がりましたらここでまたレポートしますので乞うご期待ください。
思いがけず、今年初の手仕事の発見となりました。

 

手仕事フォーラム 久野恵一