手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

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手仕事調査:東北地方

南東北手仕事調査1

南東北手仕事調査1

2005年5月
訪問地:宮城県黒川郡大和町、他

●駆け足旅行の始まり・北限の筍

さる5月12、13、14日と、南東北を車でぐるりと廻ってきました。毎年4月上旬から中旬にかけて、桜の北上と共に盛岡、久慈、角館まで足を延ばすのですが、今年は他の地方での用事が重なり、必要箇所のみに絞った駆け足旅行となりました。東北への旅は前日深夜の出発が通例ですが、この日は早朝の出発です。最初の目的地、宮城県大和町に12時半に到着し、予め連絡していたので、大和町七ツ森の箕づくりの鈴木さん宅で昼食となりました。朝掘り筍の甘煮が出てきました。筍は孟宗竹です。真竹や孟宗竹の北限自生地はこの辺りからわずか100キロ北の北上です。先月には最南端の鹿児島大浦産を食べ、今回は北限を食べられて、とにかく幸運です。やや薄味で美味しいものでした。他にも葉ワサビの酢漬け、ぜんまい、わらびなど山菜のおひたし、身欠にしんでダシとりした濃厚なお煮しめなど。どれも今が旬で、自宅庭や裏の林、小川から採れたものばかりです。すっかり話し込んで気がついたら2時を過ぎていて、慌てて仕事の話となりました。

●足付きの篭を新たに発注

今回の目的は、箕づくりから応用した肥料振り篭をさらに改良して、深篭と蓋をかぶせた大文庫を注文することです。形状、寸法などを話し合い、面倒な仕事であることは十分承知のうえで、お願いしました。もともと製作意欲のある鈴木さんは、富山県氷見の箕づくりからヒントを得た篭(かご)づくりの話などにも興味を持ってくれて、とにかく今回の注文に取り組んでいただけることとなりました。6月中旬には見本ができあがる予定です。 帰りがけトイレに入ると、片隅に足付きの小さなチリ篭がありました。箕づくりを応用した深篭で、しかも足付きです。ここでは笹竹系の篠竹を用いますので、足付きに向く真竹の細工にこの辺りの職人は取り組みもしません。しかし、お願いした篭は桜皮を篠竹で編み込むものなので、どうしても置くと安定しません。本来は地面に置くか、針にひっかけて吊るすためのものなので、今の暮らしには向かないのです。足付きにして欲しいと思っていたので、戻って鈴木さんに足付きの篭のことを聞くと、仙台の真竹職人に頼んで足だけつくってもらうと言います。それなら、一戸の上平君に頼めば足づくりはお安い御用ですから、もっと使い易いチリ篭やその他の室内向けの篭も可能です。さっそく筒長篭を注文しました。 既に3時、先を急ぐので失礼して、大崎町方面をめざします。暫く走るとバックミラーに七ツ森が美しく映ります。草原に入ったところで車を停めてしばし眺めました。こんもりとした山が七つ並んでいます。なだらかな形状の山々が、確かに森のように見えます。

●90歳!のあけび蔓細工

再び走り、日米共同軍事演習地の脇を通過して、茅葺屋根をトタンで覆った大きな民家で暮らすHさんを訪ねると、ちょうど自宅脇の畑の草取り作業中でした。とても大正5年生まれの90歳には見えません。一昨年の冬期につくってあったあけび蔓の背負い篭を、今回ようやく受け取ることができました。この地へは時間もかかり、昨年はうかがう約束をしながら来られなかったのです。すかし編みで縦長の背負い篭は、茸採りに使われてきたそうです。この地方では篭をフゴといいます。紐でくくって腰に下げる小さな腰フゴもつくります。Hさんの篭づくりは専門ではなく、子供の頃から教わった作り方で自家用のものをこしらえてきたそうです。上手だったゆえに、近所の人はやめたけれども、たまに注文が入って、せいぜい年に5個程度ですが、ずっとこの年まで続けてきたのだそうです。 材料も自分で附近を探すのですが、ここでも植林が進んだおかげで山が荒れ、蔓がみつからなくなってきているそうです。秋口の採集時期には元気で山に入ってください、とお願いして岩出山町へ向かいました。

手仕事フォーラム 久野恵一