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伊予だより

西予市野村町の伊予生糸

2015年6月10日
語り手:門田真記子(手仕事フォーラム会員)

 

松山市より南西へ車で約2時間。四国カルスト高原の麓に西予市野村町があります。

旧野村町は山間の自然豊かな町で、明治時代より養蚕産業が盛んだったところです。

お蚕さんから作る生糸作りを見てみたいと思い、野村シルク博物館を訪ねました。

 

野村シルク博物館では、製糸から染色、織りの工程を見学でき、古い資料なども展示してあります。

 

糸の染色

 

織機

 

桑かご、あじろ、桑切り刃など手仕事の道具

 

製糸作業は多条繰糸機と呼ばれる機械で行われます。

繭をぬるま湯につけて糸を引き出しやすくし、回転している小さなプロペラに絡ませていきます。

ひとつの繭から引き出した糸は蜘蛛の糸のように細く、何個かの繭の糸を撚り合せても髪の毛ほどの細さでした。

機械といっても、全自動ではなく工程の中に人の手の感覚が加わり、 モーターをあえて低速回転させることで空気を含んだ軽やかな糸にしています。

 

作業中だった生糸は、能衣装の復元の為に注文を受けたのだそうです。

生成り色の光輝く生糸でした。

 

大正時代初期の全盛期には1000戸以上あった養蚕農家も、今は町内に4軒のみ。

町内にあった製糸工場が閉鎖してもなお、町内の蚕で伝統を受け継ごうとこの施設ができたのだそうです。

絹織物の歴史と文化を学べる貴重な場として、毎年全国各地から生徒さん達が来られています。

 

生徒さん達は機械でなく、座繰りと呼ばれる手廻しの道具で繰糸を学びます。

 

敷地内には蚕のエサとなる桑の木が植えてありました。春から晩晩秋までにできる繭のうち、春の繭が一番良い糸になるそうです。

新芽の美味しい桑の葉を食べられるからでしょうか。

 

傾斜が多く、水の豊かな野村町は桑の栽培に適しています。

その気候風土が手仕事を守り、手仕事がまたこの町の風景を守ってくれているように感じました。