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住まいと暮らし

三国の町並み

三国の町並み

2015年5月13日
語り手:吉田芳人(手仕事フォーラム会員)

 九頭竜川、竹田川右岸に沿って三国の町並みが続いています。川の等高線に沿って蛇行して造られた道沿いにかつての船問屋、船主の商家が並んでいます。商家は間口4間から5間が多く、みせ、ざしき、表の道から川へと続く通り庭があり、背後に土蔵を持ち川への船着場を持っていました。現在は防波堤と道路が川沿いに造られ、川と蔵を結ぶ河岸の姿は失われ多くの土蔵も取り壊されています。通り沿いの商家も建て替えが進み、車社会の生活が当たり前になり駐車場のための空地が設けられたりしています。これは三国ばかりではありませんが、町並みもどんどん変わっています。幸い川側の道路が整備されることにより、川岸の風景は変わりましたが、本通り沿いの町並みは往時の面影を保っています。

 三国には、「かぐら建て」と呼ぶ独特な建て方があります。切妻造り、妻入りの建物の前方に平入桟瓦葺き2階建ての建物が建てられ、一見平入2階建ての建物に見えますが、奥の切妻屋根が平入屋根越しに見えるため判別が付きます。「かぐら建て」は商家に多くみられ、道沿いのみせが発達し2階建てになり、独特な建て方になったと考えられます。旧岸名家は、江戸末期に建てられ、かつては三国湊で材木商を営んでいた商家で国の登録有形文化財に登録されています。屋根は越前赤瓦、棟押さに笏谷石を使用し、大戸、蔀戸を備えたみせ部分にかつての帳場が残され、みせ、通り庭に福井市足羽山から採石された笏谷石が敷かれています。岸名家の先祖は芭蕉門下でもあり2階に句会を開いた部屋や坪庭に水琴窟を備え、三国の文化を語る上で欠かせない建物です。宮太旅館は、かつて回槽業を営んでいましたが明治の初めに旅籠屋を営むようになりました。かぐら建ての平入桟瓦葺き2階建ての2階部分に障子戸、1階部分に竪格子を備えた典型的な商家の造りを残しています。

江戸末期に建てられた旧岸名家

みせの床に薄青緑色の笏谷石が使われています

幕末期から旅籠屋を営む宮太旅館

 三国は文化人との関わりの歴史も深く、作家高見順の生家が現在も残っています。三好達治が1944年から5年間、三国に滞在中足繁く通った元料亭「たかだやは、平入桟瓦葺き2階建てで登り梁、袖うだつを備え、2階部分に大正レトロ風のガラス格子戸が入り、下屋庇は厚板葺きで、軒先部分を銅板葺きとしています。板庇の押え木は端をそり上げ、小口に銅板の飾り金具が取り付けられています。北陸では、2階屋根と下屋庇の関係は冬の気候の違いにより地域独特の発展が見られます。三国の場合は、海が近いため、積雪が余り多くないと考えられます。下屋根の軒の出は大屋根の軒の出と同じか、それより前に出ている建物が多く軒先を銅板葺きとして雨対策しています。富山県高岡の場合、雪の被害を軽減するために、2階大屋根を太い登り梁で支え、1階の下屋板庇軒よりせり出しています。落下した雪が1階の庇に当たらないため、屋根板が傷みにくく、雨でもあまり濡れないようになっています。そのため建物外観も骨太な印象を受けます。三国では軒先を銅板葺きとするか、下屋全体を銅板葺きとする建物が多く雨、風対策に重点が置かれます。

元料亭「たかだや」

下屋板葺き屋根の押え木の端部が反り上がっているのが特徴

高岡市金屋町の町屋、大屋根が下屋庇よりせり出しています

 港の繁栄と共に出村遊郭と呼ばれた歓楽街も栄え、昭和初期まで賑わっていました。出村遊郭は旧丸岡藩領にあり、福井藩三国との境、辰巳川に架かる小さな橋は思案橋と呼ばれ 遊郭に行こうか帰ろうかと思案したことからそう呼ばれるようになったそうです。布施田家住宅は遊郭の面影を残す数少ない建物です。桟瓦葺き2階建て、大屋根、下屋共に腕木を出して出桁を支えるせがい造りで上下階の窓の大部分を竪格子で覆われた建物です。

思案橋を渡るとかつての出村遊郭があった地区

遊郭の面影を残す布施田家

 大木道具店は妻入り入母屋造り2階建てで、2階の階高が高く、真壁の外壁と上げ下げ窓を交互に配し、壁面に取扱商品名の文字看板を取り付けています。下屋庇はむくりの付いた銅板葺き、軒をせがい造りとし、幕板をめぐらし1階廻りのショーウインドウと笏谷石と左官細工の化粧腰を持つ和洋折衷様式の建物です。

和洋折衷様式の大木道具店

 江戸時代からの水運の中継点としての繁栄は、手仕事の実用品として三国箪笥を生み出しました。北前船の中で使われた船箪笥は、船頭や水夫が大切な書類やお金、着物などを入れるものです。海難に備えて海中に投げ出された場合も水が入らず、海に浮くように造られています。外側を欅で、鉄板で角を囲み中の抽斗には桐を使っています。前扉に鉄の透彫り錺金具を付けきわめて豪華なものです。これらの箪笥は主に三国、佐渡小木、酒田で製造されました。どちらも、北前船の寄港地として栄えた場所で、土地の生活、気候風土、経済力、生活習慣、材料の種類、伝わる木工技術を背景に、豊富な欅材を使った精緻な指物、漆塗り、錺金具が一体となって完成した手仕事の品です。どのようなものか桂樹舎工芸館にある佐渡の船箪笥を見てください。

金庫として使われていた帳箱形船箪笥

扉を開けた中の抽斗にも飾り金具が付けられています

衣服を入れる箪笥は半櫃(ハンガイ)型船箪笥

下段に引違い戸を持つ帳箱形船箪笥