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住まいと暮らし

文庫箱の新作

文庫箱の新作

2016年2月21日
語り手:吉田芳人(手仕事フォーラム会員)

 伝統的な技法から生まれたものには、使われる目的が明確なものが多いですが、元々の用途を超えて、使う側が生活の中でどの様に使うか工夫して楽しむことが出来るものがあります。逆に製作側も、生活の変化を見極め新しいものを創作する試みは、伝統を守る上でも必然と言えます。

桂樹舎ではビームス限定の商品をいくつか製作しています。先日、東京のビームスで見かけて買った文庫箱を見てもらいながら、泰樹さんに製作時の話を聞いてみました。

 昨年製作された文庫箱には、桂樹舎の20年来の定番「鯉登り」の鯉ウロコ柄が取り入れられています。サイズは、はがき箱・文庫箱小、大・特大の箱(ビームスでは衣装箱としています)があります。初め、文庫箱は桂介さんが小は洋封筒、大は便箋、和封筒(サイズはB5位)を想定してサイズを決めたそうで、写真や書類等の整理箱として使われています。

 今回の新作は、蓋表のウロコ柄に2種類あり、どれも定番の鯉登りに使われている柄を基に、今回の商品のために製作したものです。製作のきっかけは、ビームスのエリス氏が定番の箱の表に鯉登りのウロコ柄を入れて作ってみないかと話がありスタートしたそうです。本々、鯉登りの柄は尾の方は模様が小さくなるため、箱蓋に利用するのに、そのままでは使えないので同じ柄が展開できるように新たに型を切りだして製作したものです。型は泰樹さんの娘さんが製作しました。商品を並べてみると判るのですが、柄は同じでも使われる部分の違いによりまったく違った印象になります、柄が大きいこともあり華やかさがあり今様と言えるかもしれません。何の柄から取ったかを知らなければ、日本の伝統模様青海波を箱に使ったと見ることもでき、色も鮮やかなため外国の方に喜ばれそうな商品となりました。製作は糊置きした和紙に色を差し、水洗いした後に金色を指すという2工程となり、通常1工程で作るより手間が掛るそうです。泰樹さんは鯉登りの柄を文庫箱に使うという発想は自分たちではできないと話をしていました。

 今回のサイズの中で特大の箱は、元々文庫箱としてないサイズですが、エリス氏が「吉田桂介生誕100年記念展」に展示されていた桂介さんがかつて製作した柿渋色の市松柄大箱をみて作ることとなったそうです。箱の造りも芯に丈夫な黄紙(圧縮した紙)を使い、箱の底には黄紙を和紙で包んだ底板を落し込みさらに和紙で増貼りする二重構造となっており、丈夫に作られています。蓋の縁は手で持ち易いように蒲鉾型の木片を入れ、和紙を貼込んだ手掛りを付けています。大きいため蓋の縁が変形しないようにするため、蓋を開けやすくするために重要な部分で、角の造りが特に難しく大変手間のかかった物です。この、サイズを何に使うか、用途は工夫次第と言えます。

 桂樹舎では、製作する商品の年間スケジュールが決まっており、なかなか新しいものを開発する時間がありません。ライフスタイルの変化に対応する商品が必要と感じつつも、商品のアイテムを増やすことは、大量生産できるものではない為、常に提供する単価がどうであるかを考えるそうです。新商品の企画の話も民藝の側から提案してくる人、クラフトやプロダクトの側から提案してくる人がおり要望は様々ありますが、依頼があってもまず提案が型染に合うかどうかを見極めて返事をしているそうです。今回は、それぞれの商品の良さをうまく組み合わせ製作された伝統に基づいた商品と言えます。