手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

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昔の物 今の物

楽焼壺

楽焼壺

2016年6月5日
語り手:横山正夫

 「昔の物 今の物」の連載も、足かけ10年100回を迎えました。久野さんと供に全国を巡り、今後の手仕事の参考となる物を集め、将来は参考館を作ろうとの意図で昔の物、今の物を問わず、健康的な品物を収集してきました。久野さんの急逝により、この目的は果たせなくなったことが残念でなりません。
 記念すべき今回は、バーナード・リーチの葡萄紋楽焼壺をご紹介します。バーナード・リーチの代表作の一つとして、常に取り上げられる作品です。
 葡萄紋楽焼壺は1914年(大正3年)に上野桜木の窯で3点作られ、1点は柳宗悦が購入し日本民藝館の蔵品となり、1点は富本憲吉が購入し国立京都近代美術館の蔵品となり、最後の1点はバーナード・リーチが所蔵していたと言われています。リーチは自身最初の著作「A Review」の表紙に、水彩画でこの壺を描いています。
 このバーナード・リーチが所蔵していた楽焼壺が数奇な運命のもとに某氏の蔵品となり、ここにご紹介することが出来ました。通常外形しか見られない貴重な作品を詳細にご紹介します。

蓋の模様が他の2点と多少異なります。

蓋裏にBLの押印があります。

底に窯傷があり、そのためにバーナード・リーチは手元に残したのではないかと推測します。

底には2点の押印があります。一つはライオン(ドラゴン?)でしょうか、もう一つはBLのマークです。後に使われる陶印とは異なります。

最後は箱書です。製作当初は、箱はなく、おそらく戦後に箱書されたものと思われます。

 バーナード・リーチはその年譜によれば、22歳の1909年(明治42年)にエッチングの教授として来日し(香港生まれで、生まれて間もなくの頃にも来ていますが)程なくして、富本憲吉と知り合い、焼物に興味を持ち、富本憲吉と供に1911年(明治44年)六世尾形乾山に入門して陶芸を学び、上野桜木の自宅に楽焼窯を作り、作陶を始めました。
 ご紹介した楽焼壺は、尾形乾山に入門してから、わずか3年程後に作られた作品です。しかし、すでに、その造形、模様、色彩どれを採っても後の作品に引けをとらない素晴らしい作品です。まさに天ぶの才と言うものでしょうか。