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黒田辰秋
昔の物 今の物

黒田辰秋

2020年1月10日
語り手:横山正夫

 木工芸の人間国宝黒田辰秋をご紹介します。
 黒田は明治37年に塗師の父亀吉の六男として京都に生まれました。当時、漆塗りの世界は分業制で木地屋(この中でも挽物、指物等分かれます),塗師屋(下地、上塗り、蒔絵等それぞれの専門職人がいます)等、専門職に分かれ、謂わばそれぞれの職人が歯車の一つとして働き品物を作り上げていました。このような分業制で生み出される工芸は絵画等と比べ、それが精緻な作品であっても芸術との認識を持たれず、絵画より一段低く見られていました。
 黒田は、工芸のこのような現状に疑問を抱き、また、富本憲吉の「窯辺雑記」を読んで、工芸の世界にも芸術家がいることを知り、自らも工芸作家を目指す志を持ちました。その後、河井寛次郎、柳宗悦を知り,素材から作品となるまで全て一人で行う木工芸の道を歩み始めました。
当初は李朝の家具に範をとりましたが、その後独自の力強い造形へと変わっていきました。その代表作は京都百万遍「進々堂」の楢拭き漆テーブルと同じく京都「鍵善」の欅拭き漆大飾り棚をあげることが出来ます。木材そのものの美しさ、力強さをこれほど端的に表した作品はこれまでの木工にはなかたと言っても過言ではないでしょう(正倉院文観木厨子はありますが)。これらの作品は黒田がわずか26,27歳の時に作られました。驚くべき才能とともに、このような若者に大作を依頼したパトロンがいたことにも驚かせられます。良き支援者がいて、始めて作家の腕も上がることを教えられます。
 その後、黒田は河井、柳、武者小路実篤、川端康成、黒沢明等の支援者を得て、拭き漆、朱塗り、厚貝による螺鈿と作品の幅を広げてゆきました。
 本項では、拭き漆と溜塗りの作品をご紹介します。

 まずは拭き漆蔦金輪寺茶器です。
 大雲院金輪寺茶入に魅了された黒田が蔦材を得て、制作したもので、作為のない落ち着いたたたずまいを見せます。

 

 次の作品は,欅拭き漆小箱です。
 黒田が手すさびに作ったものでしょうか。極小の作品ですが黒田の手の温もりを感じられます。

 次の作品は紫檀拭き漆紙刀です。
 黒田は,欅、柘植、黒柿、梅等様々な材を使って紙刀を作りました。木材の木肌をいかに愛していたかが分かります。またその造形には流れるような美しさがあります。

 最後の作品は欅溜塗り大平椀です。丁寧な下地の上に良質な日本産透き漆を何層にも塗って仕上げてあります。その堂々たる姿、また透き漆を通して見える欅の木肌はまさに黒田辰秋の世界です。

以上、黒田辰秋の作品をご紹介しましたが、黒田を知る参考書籍を以下にご紹介します。

国立近代美術館で開催された展覧会の図録です。

白州正子による限定本です。黒田の技法を詳細に述べています(装丁は芹沢C介)。

豊田市美術館で開催された展覧会の図録です。

上記図録ともども黒田工房でアルバイトをしたことのある豊田市美術館の学芸員青木正弘氏が黒田作品の解説をしています。

黒田が理想の椅子として追い求めていたスペインの椅子の解説本です。黒田のスペイン探訪の記事もあります。

最後は黒田の弟子とも言える早川謙之輔の著書です。黒田の人となり、黒沢明の王様の椅子制作の経緯、黒田の製作技法等木工好きにはたまらない内容となっています。