手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

ホーム>連載・手仕事レポート>昔の物 今の物>掛硯と煙草盆

昔の物 今の物

掛硯と煙草盆

掛硯と煙草盆

2009年10月21日
語り手:横山正夫

 掛硯と煙草盆の間にどの様な関連があるのか、首をかしげている方もいらっしゃると思います。強いて関連を挙げるとすれば、昔のビジネスマン(商人)、文人の座右にあった物とでも関連づけられましょうか。

 ただし、ここでご紹介しようとする目的は、関連づけにあるのではなく、木工の観点から取りあげました。

 

 まず掛硯をご紹介します。

掛硯とは、持ち運びのできる文房具箱とでも言えばよいのでしょうか。まずは写真で御覧下さい。

上部の蓋を開けると硯と筆が入っています。その側方には小引き出しが三個並んでおり、その内の一つには鍵が掛かるようになっています。どの掛硯を見ても同じ配列になっており、長い年月の内に最も機能的な配列に収斂されてこの形になったものと思われます。そして、おそらく、個々の人々が愛用する物として作られた物であるため、その材も多くは欅の杢を使い、また金具も堅牢かつ意匠に工夫をこらしています。

現代の生活では、硯も筆も日常使われる事は希ですが、日常、座右に置いて、日々愛でることの出来るこの様な木工品があればと思います。

 

つぎに、煙草盆をご紹介します。

煙草は、現代では、悪者扱いされていますが、つい20年位前までは、大人の嗜みとして、愛煙されてきました。ここで、煙草を擁護するつもりはありませんが、長い喫煙の習慣から、その道具も素晴らしい物が作られてきました。その指物には見るべきものがあります。以下に煙草盆二点をご紹介します。

いずれも、欅の厚板を使用し、指物師が自らの腕を示すように木組みを表にだして、これを一つの模様としています。この様な品物を易々と作り出していた時代を羨ましく思います。

掛硯、煙草盆に限らず現代生活において、日々愛でることのできる真の木工品はもう作れないのでしょうか。