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瀬戸煮〆皿

瀬戸煮〆皿

2011年6月16日
語り手:横山正夫

 瀬戸の煮〆皿は江戸末期から瀬戸で大量に作られた雑器中の雑器と言えるものです。しかし、この大量に作られたが故に、そこに描かれた絵や文字は、手慣れた筆裁きによる無意識の美を表しています。陶磁器に描かれた絵や文字の中では初期伊万里、桃山唐津と並んで第一級のものではないでしょうか。以下に瀬戸の煮〆皿として、石皿、馬の目皿、そして絵皿をご紹介します。

まずは石皿です。

 無地の石皿で尺一寸程あります。堅牢無骨ですが、黄瀬戸の美しさだけでも十二分に魅力を発揮しています。石皿と言うと、その描かれた図柄の面白さに目が行きがちですが、その器体の素晴らしさを見逃してはならないと思います。

 この石皿は丁度一尺程の大きさです。呉州と鉄で鶴を描きます。線に淀みがなく、素早く大量に描かれた様子が窺えます。鶴が優雅に羽ばたき、今にも器体から飛び出しそうです。

 この石皿は七寸強の大きさです。呉州と鉄で「樽さかな」と描かれています。職人が数に任せて書いた文字ですが、味わいのある文字となっています。

 この石皿も七寸強の大きさです。菖蒲の図柄でしょうか。少し稚拙な感じがしますが、愛らしい一枚です。

この石皿は一尺程の大きさです。少し時代が後の物か縁が丸みを帯びています。しかし、その描かれている図柄は何ともユーモラスで蓑傘を付けた人物が生き生きと描かれています。省略の中に絵付けの技を見ます。

次は馬の目皿です。

この馬の目皿は一尺程の大きさです。石皿と異なり、長石分の多い釉薬で器体全面を白化粧し、その上に鉄で渦巻き文を描きます。単純なようですが、淀みなくこの渦巻き文を描くことは日々大量に同じ図柄を描くことで、初めて可能となります。現代でも模倣品を見かけますが、無意識の渦巻き文にはほど遠い物ばかりです。

最後に絵皿をご紹介します。

 この絵皿は八寸程の大きさです。やはり長石分の多い釉薬で器体を被い、その上に鉄で絵を描きます。石皿、馬の目皿より上手の品であったのでしょうか、絵が細密です。しかし、この絵も線に淀みがなく、そのため、絵が生き生きとしています。

 以上、瀬戸の煮〆皿をご紹介しましたが、陶磁器に描かれる絵や文字は紙等に描かれる物とは全く異質のものであり、そこにまた面白さがあります。