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筒描き(馬の腹掛け)

筒描き(馬の腹掛け)

2012年7月19日
語り手:横山正夫

 日本の染織は各地各様、様々な技法による美しい作品が存在します。本項では筒描きによる馬の腹掛けをご紹介します。「染織」、「筒描き」、「馬の腹掛け」について、それぞれ説明をすべきところですが、「昔の物、今の物」の目的が能書きを読んで物を見るのではなく、物をご自分の目で見て頂き、ご自分で評価をして頂くことにあるため、ここでは説明を省略させて頂きました。
 まずは一点目です。

 造形の巧みさ、色使いの美しさ等まさに筒描きにおける手仕事の美を表しています。
この写真は、長さ3.1メートル幅55センチに及ぶ長大な「馬の腹掛け」の一部です。あまりに長大なため、その一部ずつをご紹介し、最後に数枚の写真を合成した全体の姿をご紹介します。

 全体を大きな写真でご紹介出来ないのが残念ですが、全長3.1メートルに渡って美しい筒描きが施されていることがお分かり頂けると思います。当時の手仕事の素晴らしさにため息が出ます。必要から生み出された美とはいえ、現代に蘇らせたいものです。
 
 次ぎに、馬の背から左右に振り分けて飾った筒描きをご紹介します。長さが1.8メートル幅32センチです。

 デザインの斬新さ、色使いの美しさ等、現代に通用するものがあります。
 
次ぎに、馬の前後を飾った筒描きをご紹介します。二枚が対となっていて、模様が多少異なります。

 このような前掛けで馬を飾っていたことを思うと、当時馬がいかに人の生活に密着し、家族同然に大切にされていたかが想像されます。
 
 最後に、馬の腹掛けを語る上で、忘れてはならないのが、滋賀県大津宿東町の存在です。
 江戸時代の寛永年間に全国に馬の疫病が大流行し、これが妖怪の仕業との風評が立ち、これを鎮めるために交通の要所であった大津宿に馬神神社が建立されました。当時の馬の存在は、現代の自動車、鉄道、建設機械、農耕機械等の全てを担う、最重要な存在で、疫病の流行は驚異で、その駆逐はまさに神頼みであったのでしょう。そして、この馬神神社が作る「大津」、「東町」と描かれた腹掛けをすると、疫病よけになると言われ、全国から参拝者が訪れたと言われています。この腹掛けは、おそらく長い期間作り続けられたものと思われますが、手慣れた筒描きで、意匠、色使い等々どこを取っても筒描きのお手本の一つではないでしょうか。

 長さ63センチ幅30センチの前掛けですが、存在感のあるものです。
 
 以上、馬の腹掛けを例に、筒描きをご紹介しましたが、筒描きは、大きな作品が作れること、特別の注文にも応じられること、色使いが比較的自由に出来ること等々から、まさに庶民の生活に根ざした染め物と言えるのではないでしょうか。その衰退が寂しく感じます。