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亀型酒器

亀型酒器

2013年5月15日
語り手:横山正夫

 薩摩焼の亀型酒器をご紹介します。薩摩焼とは、薩摩地方の竪野(たての)、苗代川、龍門司、平佐、能野(よきの)等々の窯を総称する呼び方です。この薩摩焼の各窯で他には見られない独特の形をした酒器が作られています。亀の形を模した手つきの酒注ぎで、男子の祝い事の席に用いられる物です。
 薩摩焼はご存じの通り、文禄、慶長の役で朝鮮から連れてこられた陶工により始められた窯です。この亀型酒器が朝鮮の物であれば同じ起源を持つ九州諸窯でも、同様の亀型酒器が作られているはずです。しかし、私は九州の他の窯で作られているのを見たことがありません。
 そうすると、この亀型酒器は、朝鮮からもたらされた物ではなく、薩摩独自の物と言えそうです。そして、その由来は中国古代の思想中の玄武をかたどっていると考えられます。
 玄武とは、北方を守護する神で、亀に蛇が巻き付いた形で表されます。この思想は我が国でも飛鳥、奈良時代から存在し、薩摩の亀型酒器も亀の本体に蛇の持ち手で構成されており、中国の思想を元に作られていたのではないかと思われます。
 物の由来を探ると、話が尽きません。ここでは、三点の亀型酒器を様々な角度から、ご紹介します。
 
 一点目は鼈甲釉薬の物です。細工が細かく、上手の工芸品の範疇の物です。しかし、その形、釉薬の美しさはジャンルを問いません。その土を見ると、龍門司の物とも思えます。

二点目は白薩摩の物です。白無地ですが、いかにも薩摩の柔らかい肌と色あいが魅力です。苗代川のものでしょう。

三点目は三彩釉薬の物です。一点目、二点目の物に比べ、細工が大まかとなっていますが、多量に作られた内の一つと見られ、手慣れた造形、三彩の美しさが魅力です。まさに手仕事の美を表しています。龍門司の物でしょう。

 以上、三点の亀型酒器をご紹介しましたが、工芸品と民芸の違い、また、物の作られてきた由来を考えさせられます。