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吉田桂介さんの「装案」

吉田桂介さんの「装案」

2013年9月18日
語り手:横山正夫

 吉田桂介さんは、ご存じの通り富山県八尾で和紙を制作する桂樹舎を主宰する手仕事の世界の先達です。いまや民藝の第一世代の謦咳に直接触れた貴重な存在と言えましょう。

 八尾に昔からある手漉き和紙の伝統を引き継ぎ、これを現代の生活にもマッチした新たな和紙製品も制作販売し、手仕事の伝統を現代生活に生かす一つの道を示した功績は多大であると思います。

 そんな吉田さんですが、お目にかかると、いかにも好々爺の雰囲気で、多くの苦難の道を乗り越えて、自らの世界を切り開かれた方とはとても見えません。しかし、物に対する目、物の飾り方、デザインなどには、近寄りがたいほどのオーラがあります。

 ここでは、吉田桂介さんの数多いお仕事の中で、「装案」を取り上げて、ご紹介します。制作物は制作されたそのままでは、必ずしも美を表しません。しかるべき場所に置かれたり、また絵画、書などはその物に合った装丁をして、初めて十全の美を表します。

 吉田桂介さんの装丁は、民藝の美を知り尽くした吉田さんが、自らの和紙の世界との融合の元に作り上げた正に、独自の「装案」の世界にあると思います。大胆な配置、独創的な色使い等他者のまねの出来ない世界です。以下に、吉田桂介さんの軸装をご紹介します。

 

まずは、芹沢C介の和紙型染め「いろは」四枚を軸装したものです。

四枚の作品をどのように配置するか、通常は横二列にすると思われますが、吉田さんは縦一列としました。表装の基本からは外れるのでしょうが、中縁(背景)の黄色、筋(作品の縁)の薄緑と相まって、明るく大胆な作品となりました。吉田さんならではの作品でしょう。

 

次の作品からは、江戸から明治頃の紅型裂の軸装です。

紅型の赤、黄が良く映える緑和紙を使っています。暗くなりがちな古裂を明るく飾り、どこかモダンな印象を与えます。なお、軸端は滝田項一さんの磁器赤絵で華やかさを盛り上げます。

以上の二点は本稿NO.61でご紹介した麻地の紅型です。単純に作品だけ見たNO.61の写真と比べて見ると作品自体に落ち着きが出ていると思います。

以上の二点は紅型裂の大きさが小さく、これを吉田さんがどのように軸装するのか、非常に興味をそそられるところでしたが、さすがに吉田さんでした。二点のバランス、作品と背景の色使い等全く持って素晴らしいの一言でしょう。和室は勿論、現代の洋間でもモダンな作品として飾ることができます。

 

 前述の通り、物は置かれるべき場所、飾るべき額や表具によって、生きもし、死にもします。吉田さんの「装案」は正に物に命を吹き込む仕事と言えるでしょう。今後も、お身体を大切に、ご活躍をお祈り致します。