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漆の椀

漆の椀

2014年1月22日
語り手:横山正夫

 漆の椀をご紹介します。
 漆の椀については、昔の物今の物(8)と(63)でもご紹介しましたが、筆者の個人的な感覚なのか、どうも現代の漆椀に馴染めません。その原因がどこにあるのかを考えてみますと、その形、そしてのっぺりとした塗り肌にあるようです。本稿では昔の漆椀の形そして肌合いを中心にご紹介します。
 
 まずは、秀衡椀です。前後、高台裏を4枚の写真でご紹介します。堂々とした高台の張り、胴部の丸み、漆繪の素晴らしさ、そして全体のバランス、まさに漆椀の王といっても過言ではないでしょう。しかし、その塗りを見ると、布着せの布目が見えるほどの塗りしかしていません。現代の過度な下地は必要なのかと考えさせられます。

 次ぎに浄法寺の三つ組み椀を揃い、正面そして高台裏の3枚の写真でご紹介します。これも高台の張りと全体のバランスが見所です。総じて現代の漆椀は高台が貧弱で器自体の美しさを損なっています。この浄法寺漆椀の形が現代の椀にあっても良いと思います。

 次の2枚の写真は浄法寺の大正から昭和初期頃の漆椀です。数物の雑器ですが堂々とした形をしています。

 次の3枚の写真は飛騨地方の漆椀です。生木を轆轤引きし、漆を何回か塗っただけの椀です。雑器の漆椀ですが、長年の使用で縁の漆がはげ、木肌が現れていますが、これでも十分に実用となります。まさに漆椀の原点と言えるかもしれません。そして、このなんでもない椀の形にも目を向けねばなりません。

 最後に趣の異なる漆椀を4枚の写真でご紹介します。この椀は輪島系の装飾椀ですが、その形、そして塗りの素晴らしさが見所です(装飾の技術も工芸分野では素晴らしいものですが、ここでは触れません)。現代の漆椀は上塗りの漆に伸展性を出すために混ぜ物を入れるのか、のっぺりとした肌合いとなっている物を見ます。しかしこの椀は刷毛目が残ることを問題とせず、しっかりとした朱漆で上塗りをしています。形の優美さもみごとです。

 以上、漆の椀をご紹介しましたが、ほぼ毎日使う漆椀ですから、堅牢で形の良い物を使いたいと思います。