手仕事フォーラム〜手仕事の品をとり入れた生活の素晴らしさを

ホーム>連載・手仕事レポート>昔の物 今の物>スリップウェア

昔の物 今の物

スリップウェア

スリップウェア

2014年7月2日
語り手:横山正夫

 スリップウェアとは、泥状の化粧土(これをスリップと言います)で模様を描き、ガレナ釉薬(鉛釉薬)を掛けた低火度の英国陶器を言います。
 低火度の陶器は人類の歴史と供に現れ、始めは無地の焼き締めだった物が、釉薬を掛け、模様を描くようになりました。そして、その後火度も上がり、また磁器も出現するなどして、現代の陶磁器となっています。
 スリップウェアも17世紀頃に英国で作られ始めますが、20世紀初め頃には衰退したと言われています。低火度で焼かれた日用雑器は産業革命による技術革新により、より高火度の陶磁器に取って代わられたのでしょうか。
 しかし、スリップウェアには、現代の陶磁器には味わえない独特の魅力があります。この魅力は低火度故の地肌の柔らかさ、独特の模様、ガレナ釉薬の肌合い等です。現代の陶磁器でこの雰囲気を出そうとしても不可能でしょう。
 以下にスリップウェアを2点(ただし、読者から二点目はオランダの物との指摘を頂きました)ご紹介します。
 まずは、長方形の大鉢です。このままオーブンに入れてパイを焼いた物です。単純な模様ですが、堂々とした存在感です。

 次の作品は中皿です。オランダの物との指摘を頂きましたが、模様の躍動感、色合いの美しさが見所です。

 次の写真は、上の作品の裏側です。低火度の雑器で決して綺麗ではありませんが、18,19世紀頃の庶民の日用生活を想像させます。

 現代において、スリップウェアが制作されているのか、筆者には分かりません。現代の作品例として、英国で作られた4つ手の大ジョッキ(キリンカルチャークラブ)をご紹介します。英国ではビールの回し飲み用に多数の持ち手の付いたジョッキが存在し、濱田庄司もその作品に残しています。

 以上、スリップウェア(二点目はオランダの物のようですが)をご紹介してきましたが、スリップウェアは低火度で焼かれた機体の柔らかさがまずその魅力であり、スリップの技法、模様だけを真似た現代の作品はスリップ模様と言うだけで、スリップウェアではありません(ただし、その作品は作者の創造物として魅力のある物も沢山存在します)。スリップウェアを知り尽くしていたと思われるバーナード・リーチの作品でも、スリップの技法を使ってもスリップウェアとは別の作品です。以下にバーナード・リーチが湯町で制作した陶板をご紹介して、本稿を終わります。