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苗代川

苗代川

2015年12月14日
語り手:横山正夫

 苗代川は鹿児島の焼き物です。鹿児島の焼き物は、ご存じの通り文禄・慶長の役で朝鮮から連れてこられた陶工によって始められました。これらの陶工は鹿児島の三カ所の港に着船しました。串木野に着船した陶工の流れが苗代川、市来に着船した陶工の流れが龍門司となり、現代に至っています。いずれの窯も朝鮮の焼き物の形を色濃く残しています。
 
 龍門司は白掛けの器胎に青、飴を流す三彩の美しい焼き物を作り、現在も民藝の主要な窯として活動しています。他方の苗代川の焼き物は薩摩藩の厳しい統制の下に製作された白物と民衆用の黒物に大別されます。民衆用の黒物は龍門司の様な派手さがないため柳宗悦の民藝運動以前には顧みられることのない焼き物でした。しかし、器胎の多様性、骨太さ、漆黒の黒等々他の窯には真似の出来ない独特の魅力を持っています。


 本項では苗代川の黒物を従前ご紹介した物を含めてご紹介します。


 まずは甘酒半胴(はんず)です。がっしりとした器胎、そして縁作りの上に、模様を貼り付け、たっぷりと黒薬で被います。模様は牡丹、竜、梅、大黒が多く、他の模様は少ないと言われています。本項では大黒と弁天の二種の半胴をご紹介します。二種の内、弁天の方が時代が古く、荒々しい中に古格を保っています。

 次にご紹介するのは、壺と徳利です。朝鮮李朝の焼き物の流れが明確に解る造形です。二枚目の釘彫りの技法は甘酒半胴にも用いられ、単純なようですが、彫りの旨さは現代では再現できないでしょう。

 次の作品は大甕です。大甕と言っても苗代川独自の細身の造形です。内側を蕎麦釉薬、外側を深い飴釉薬で被います。美しい甕です。

 次の作品は竹筒型花生けです。苗代川では竹筒型の花生けを多く作りますが、この作品は良く焼き締まり、黒釉薬が鉄生地であるかの様に見えます。造形の美しさと相まって、野武士の風格を感じさせます。

 次の作品は蕎麦釉薬の花生けです。この蕎麦釉薬の美しさも苗代川の財産です。器胎の上にたっぷりと蕎麦釉薬を掛けています。

 最後に薩摩の焼き物に特徴的な茶家(ちゃか、またはちょか)をご紹介します。茶家は焼酎を入れる徳利です。焼酎を入れて、火に掛けて暖め、そのまま卓に置いて猪口に注ぎ、飲みます。丸い器胎にちょこんと付いた口、そして三つの足が愛らしい形を作り出しています。三枚目の写真は現代の茶家ですが、伝統を保った形をしています。

 以上、苗代川の黒物をご紹介してきましたが、現代の苗代川が伝統の継承の下に活動をしているのか筆者には解りません。しかし、逞しい苗代川の黒物の伝統はなんとしても継承していって欲しいと思います。

 また、ここではご紹介出来ませんでしたが、苗代川の白物について、民藝の視点から再興をはかるべく久野恵一氏が執念を燃やしていたことを筆者は知っています。後日現代の苗代川の白物をご紹介出来る日を楽しみにしています。