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隠岐國風土記

里帰り

里帰り

2009年3月7日
語り手:田中浩司

 隠岐・海士町に上陸し、一夜の宿を島人に求めても、「あまりに畏れ多い」と、断られ、粗末な家で半野宿をした後鳥羽上皇は、現在三穂神社が鎮座する崎地区の土地で、

  命あれば茅が軒端の月もみつ知らぬは人の行くすえの空

 と、流転の身を詠みます。古典に疎いので上皇の和歌の精髄を云々することはできませんが、「知らぬは人の行くすえの空」と、人生の悲喜の変化と自然の変化を重ね、「空」という一語が隠喩的な広がりのある言葉として世界を集約している気がします。鎌倉幕府(神奈川!)に敗れ、都を追われたという経緯から諸行無常を歌ったような歌として解釈をされる一首ですが、むしろ、命があれば夜空に浮かぶ月の明かりに身を浴することもできるのであって、まったくの絶望という訳ではない。少なくとも空に光もないような雨天の夜空でも、月のない漆黒の夜空でもない。命のようにかすかな月の光はやがて空が巡り、朝が訪れることを暗示しているようにも思えてきます。つまり、この歌には現状に対する悲嘆もあるし、将来に対するいくばくかの楽観もあるように感じます。「知らぬは人の行くすえの空」であるなら、明日どうなるかは空のように誰にもわからないのです。「フォーラムの人たちはすっかり田中君が隠岐の人だと思っているよ」と、久野さんに言われたりしますが、違います。「知らぬは人の行くすえの空」、私は生まれも育ちも神奈川です。もやい工藝のある鎌倉の隣にある藤沢の生まれ。江ノ島や時宗総本山の遊行寺があることで、知っている人もいるかもしれません。江ノ島はザ・湘南のイメージとして頻繁にメディア露出しているものの、案外名前が知られていないのか、「島があるの?」と驚かれたりもしますが…。ちなみに、江ノ島は日本離島センターの発行している日本の島の総合事典『SHIMADAS』にもちゃんと載っています。

塩作りに従事して、いつのまにか5年の歳月が過ぎましたが、最近では海士乃塩が本人そっちのけで里帰りする現象もでてきました。鵠沼の実家の工藝サロン梓はもちろん、もやい工藝や果ては藤沢駅の目の前まで!まさに、里帰り。自分が生まれ育った超地元に自分のつくったものがある、というのは結構嬉しいものです。藤沢駅前にある藤沢らしからぬカッコ良さのダイニングバー「COVO(コーヴォ)」さんとのおつきあいも、実は海士乃塩を通して。毎年出展しているアジア最大級の国際見本市FOODEX JAPANでお目にかかり、ご縁ができました。小田急線藤沢駅のホーム沿いの道を歩くこと約3分。店名のCOVOとは、イタリア語で「隠れ家」のことで、湘南エリアの大人の隠れ家として楽しめるお店です。オーナーが地場素材の生産者と触れ合いながら、素材と向き合っているため、スタイリッシュで美味しい料理の中にも湘南の風土が感じられます。スタッフも全員地元出身。とてもローカルです。

 最近は湘南マルシェ「マルシェ・オランジェ」として、新しい野菜の朝市イベントを駅前のお店でも始められました。察するにオレンジはオレンジとグリーンの東海道線からのイメージ?ともかくも、藤沢の朝市に藤沢の野菜とともに海士乃塩が並んでいる…。こんなことは、地元にいるときの私には想像もできないこと。こんな形で「もの」が一人歩きし、里帰りまでするとは、まったく、「知らぬは人の行くすえの空」ですね。

最後にCOVOさんの料理とのコラボをご紹介。

COVO豆腐 海士乃塩で頂いたら、とても美味しかったです!

藤沢産の豚しゃぶ 色々なつけタレでいただけます。こちらはごま油+胡麻+海士乃塩。
今月は本人が里帰り。朝市の様子など、地元の話しを伺うのが楽しみです。