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中村恵子さん灰釉六寸五分唐津皿

2004年3月26日 久野恵一
製作地:唐津焼東風窯(佐賀県唐津市)

昔からの唐津焼がもつ素直な良さを、その原点から見直す
唐津焼と言えば、日常に用いられる器とは区別されて、一般には茶道具などの美術陶器を想い起こす焼物といえるでしょう。唐津市周辺には、茶陶唐津の伝統を受け継いで作陶に励む、数多くの作家の窯があることで知られています。
唐津市郊外の竹木場(タケコバ)という山中で、東風窯を経営する中村恵子さんも伝統唐津焼をめざす一人です。
中村さんは、登り窯の原型ともいわれ、竹を真二つに割ったような形から割竹窯と呼ばれる窯で、絵唐津・斑唐津(マダラガラツ)・朝鮮唐津と称される、古唐津様式の作品を作ってきました。
しかしごく最近、ご自身が用いる暮らしの器に対する考え方から、従来の作品作りと平行して、普段使いの製品づくりに取り組みはじめました。まず、昔からの唐津焼がもつ素直な良さを、その原点から見直すこと。それが取り組みの出発点でした。

中村さんが取り組んでいるのは、こうした唐津本来の特徴を生かした皿や碗などの雑器づくりです。器は、絵唐津の絵を描かず、縁ぎわを黒褐色の鉄釉で巻き、皮鯨と呼ばれる手法で簡潔に形全体が引き締められています。それによって、むしろ使い易い器になったといえます。
とりわけ、幅広い縁の六寸五分皿(写真)は、伝統の重みを伝えながら飽きのこない、使うほどに味わい深くなる逸品です。



中村さんが取り組んでいるのは、こうした唐津本来の特徴を生かした皿や碗などの雑器づくりです。器は、絵唐津の絵を描かず、縁ぎわを黒褐色の鉄釉で巻き、皮鯨と呼ばれる手法で簡潔に形全体が引き締められています。それによって、むしろ使い易い器になったといえます。
とりわけ、幅広い縁の六寸五分皿(写真)は、伝統の重みを伝えながら飽きのこない、使うほどに味わい深くなる逸品です。
割竹窯の焼成では一定した焼き上がりは求められず、様々な変化が表われた作品ができあがります。これは窯変ともいわれ、総じて灰色を呈していますが、緑青色を帯びたものや鼠色の濃淡が表われたもの、あるいは薄茶色(ベージュ)がかったものなどが生まれます。
同じ色合いが揃わないのが特徴といえるかも知れませんが、好みの一枚を使っても、不揃いの取皿に使っても、必ず食卓を楽しく彩ってくれるでしょう。