ホーム>フォーラムが選ぶ・この逸品>秋田の『かこべ』
フォーラムが選ぶ・この逸品
秋田の『かこべ』

2011年8月 高梨武晃
製作地:秋田県角館
様々な東北の品々が集まる、新宿BEAMSでの『'11日本手仕事展−美しきものとの出会い 東北−』で私が心奪われたのはこのヤマザクラで出来た籠です。
秋田では『かこべ』、岩手では『かっこべ』と呼ばれているそうです。
桜の樹皮というと綺麗に整えられた樺細工しか知らなかった私はこの獣の革と見紛うがごとき表情に衝撃を受けました。
まるで雄大な東北の景色を切り取りそのまま持って来たかのような美しさ。
そしてその奥からは原日本を思わせる力強さを感じさせてくれます。
手と内側を見ると採取した時からか、はたまた乾燥の途中で出来たのか割れがあります。
そこを山葡萄の蔓で補強してあります。
それがまたアクセントとして目に引っ掛かり見る度に喜びを感じます。
伝統的には飼い葉桶として大きいサイズであったようですが、
これは端材を使い、サイズを縮め現代の生活にも取り入れ易くなっています。
作られたのは角館の佐藤定雄さん、智香さん夫妻。
智香さんは材料を採りに一週間程泊まり掛けで、時には十和田湖周辺まで行かれるそうです。
材料の採取、選択、加工から制作と全てをこなします。
そのような大変な労力を掛けて出来上がったこのかこべ。
日常の中に力強さを与えてくれる逸品です。